宮崎県口蹄疫終息後の復興に関する会長談話

宮崎県で2010年(平成22年)4月20日に発症が確認された家畜伝染病「口蹄疫」は、宮崎県が同年8月27日に終息を宣言し、4か月余を経てようやく区切りを迎えた。口蹄疫の被害は未曾有の規模に及び、牛・豚等の家畜約29万頭が殺処分され、5町で家畜が全滅し、畜産業者だけでなく関連業種をはじめ地域のあらゆる産業が大きな打撃を受けた。また、移動搬出制限やイベントの自粛など市民生活にも深刻な影響が及び、宮崎県の推計によれば経済損失額は約2350億円に上る見込みである。


今後、復興に向けて本格的な取り組みが行われるが、残された課題は少なくない。


例えば、口蹄疫ウイルスの感染ルートは未だに解明されていないことが挙げられる。徹底した原因の解明は、安心・安全の根底を支えるだけでなく、今後の再発防止を図るうえでも不可欠である。現在、農林水産省の口蹄疫疫学調査チームが調査を進めているものの、調査権限の限界が調査の障害になっているとの指摘もあり、そうであるならば、その検証が必要である。


様々な不備が指摘された初動の防疫体制についても、根本的な改善措置は今後の重要課題である。1951年5月31日発令の家畜伝染病予防法が現代の大規模家畜産業の実情に適合していないとの指摘もあり、同法の改正や、口蹄疫対策特別措置法の恒久法化などの検討も必要である。


畜産業及び関連産業の復興はもとより、地元の事業者、労働者、市民の支援も重要であり、具体的な支援策の検討は緒についたばかりである。風評被害や肉牛等の取引における差別的な扱い、関係者の心のケアなど口蹄疫に端を発した二次的な被害も現に見受けられ、人権保障の観点から復興施策を後押ししていく必要がある。


当連合会は、2010年(平成22年)8月19日、宮崎県口蹄疫災害対策本部を設置し、宮崎県弁護士会の宮崎県口蹄疫被害対策本部、九州弁護士会連合会の支援統括本部とともに、今後の地元の復興について全力で支援することとした。現地の方々の復興活動に心よりエールを送るとともに、事実の解明、防疫体制の構築、効果的な支援等を図るために必要な法制度の検討、提言等を行う所存である。


2010年(平成22年)9月15日


日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児