死刑執行に関する会長声明

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本日、東京拘置所において2名に対する死刑が執行された。昨年9月に千葉景子法務大臣が就任して以来、初めての執行である。


千葉法務大臣は、その就任直後の時点において、死刑の執行は人命にかかわる問題ゆえに、慎重に取り扱っていきたいと述べていた。にもかかわらず、千葉法務大臣が、本日まで積極的な議論の場の創設や情報公開の促進などを行うことのないまま、2名の死刑執行を行ったことは、極めて遺憾である。


日本政府は2008年10月、国際人権(自由権)規約委員会より、「政府は、世論調査の結果に拘わらず死刑廃止を前向きに検討し、必要に応じて国民に対し死刑廃止が望ましいことを知らせるべきである。」との勧告をはじめ、死刑に直面する人々に対し、必要的上訴制度の欠如を含む手続的保障の不備(今回執行された2名のうち1名も、自ら控訴を取下げ死刑が確定している。)や、死刑確定者に対する非人道的処遇の改善など、数々の問題点を指摘され、その改善を迫られた。


その後も、わが国の死刑制度をめぐっては、様々な問題が浮上している。2009年10月には、すでに死刑が執行された飯塚事件について、死刑判決を支える有力証拠のDNA鑑定に誤りがあったことを理由とした再審請求がなされている。また本年4月27日には、最高裁第三小法廷において高裁での死刑判決を破棄・差し戻す判決が下された。


今こそ、死刑制度の抱える問題点について、幅広い議論を行い、そのために死刑の執行を停止すべき時である。


千葉法務大臣は、本日の記者会見において、自らが死刑執行に立ち会ったことを明らかにし、今後、東京拘置所の刑場を公開し、法務省に死刑制度の存廃を含めた死刑制度の在り方等についての勉強会を立ち上げる意向を示したという。この勉強会が真に開かれた場での国民的議論が行われていく契機となることを期待する。当連合会は、上記勉強会の立ち上げに伴い、政府に対し、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止することを重ねて強く要請するものである。


2010年(平成22年)7月28日


日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児