大阪府の小規模金融構造改革特区提案に反対する会長声明

大阪府は、7月6日、小規模金融構造改革特区(上限金利と総量規制の規制緩和)構想を国に対して提案した。


同構造改革特区の提案は、「貸金業法の完全施行に伴い小規模事業者が短期資金の借入が困難になる、あるいは資金需要者が返済能力があるのに借入れができなくなる恐れが出てきている。このためアクセス自由な小規模金融市場を創設する」とし、1年以内の短期貸付及び20万円以下の少額貸付の上限金利を年29.2%へと緩和するとともに、年収の3分の1を超える貸付を原則禁止とした貸金業法の総量規制についても、返済が見込まれる場合の緩和策として、返済能力があると認められる場合や専業主婦の小額貸付として上限50万円の貸付等について大幅な適用除外を認めている。さらに、貸金業者の負担等により大阪府独自の相談支援制度の創設を提案するものである。


小規模金融構造改革特区での上限金利の緩和は、「少額・短期の特例貸付」として厳しい批判を受け、改正貸金業法の検討のなかで排斥されたものと同趣旨であり、全体としても、高金利の引下げと総量規制により多重債務者の発生を抑制するとの貸金業法改正の趣旨を完全に没却するもので、当連合会として到底容認することができない。


大阪府及び地方自治体に求められているのは、国の多重債務問題改善プログラムに基づく相談窓口の充実や多重債務者の相談窓口への誘導、低利貸付を含む各種セーフティネットの拡充、ヤミ金融の撲滅等に向けた取組である。大阪府の提案は行政の職責を放棄したものと言わざるをえない。また、貸金業者の負担等による相談支援も本末転倒である。


小規模金融構造改革特区を導入することは、再度、貸金業法改正前の状況に逆戻りさせることになり、多重債務問題を深刻化させることになるであろう。また、同提案にかかる貸付制度の借主は大阪府民に限られていないことから、全国に高金利・過剰融資が蔓延しかねない危険性を有し、さらに出資法が定める刑罰規制が地域によって異なることは公平性を害することとなる。


なお、既に、2005年に宮城県内でも貸金業者側から構造改革特区として提案されたものの、当時、出資法の上限規制が検討されていたこと、刑罰規制の公平性の問題等から提案が認められなかった。


当連合会は、小規模金融構造改革特区の提案に反対を表明するとともに、大阪府に対し、この提案を直ちに撤回するよう求めるものである。


2010年(平成22年)7月14日


日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児