横浜弁護士刺殺事件に関する会長声明

2010年(平成22年)6月2日に発生した、横浜弁護士会所属の前野義広弁護士が刺殺された事件の被疑者が、昨日深夜に逮捕されたという報道がなされた。この事件は、同弁護士が、その法律事務所を訪れた男から胸部等を刃物で刺されて死亡したという事件である。


報道によれば、被疑者は、同弁護士が受任していた離婚訴訟事件の相手方であり、事件後に行方が分からなくなっていたとのことである。近年、離婚事件を受任した弁護士が相手方である夫などから攻撃を加えられる事例が跡を絶たない。


報道だけでは犯行動機など詳細は不明であり、今後の捜査の進展を待つことになるが、本事件もまた、自らの要求に応じない弁護士への逆恨みから殺害に及んだ業務妨害行為であるとすれば、断じて許されるものではない。


弁護士は、弁護士法に定められているように、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命としている。弁護士に課せられているこのような使命の実現は、主として訴訟手続や交渉等の個別事件を通じてなされるものである。しかし、そのような使命は、弁護士活動の安全が確保され、自由な弁護士活動を行うことができる環境があってはじめて実現されうるものである。


弁護士が、受任事件に関連して、その相手方などから生命身体に危害を加えられることは、弁護士制度及び法秩序に対する重大な挑戦であり、われわれ弁護士は、このような凶行に、一致団結して立ち向かうとともに、一層、弁護士業務妨害の排除及び予防を徹底していくことを認識しなければならない。


当連合会は、前野義広弁護士のご冥福を祈り、ご遺族に対して心から哀悼の意を表するとともに、暴力的な手段による弁護士活動への妨害行為に決して怯むことなく、弁護士の使命を貫徹していく決意であることをここに表明する。


2010年(平成22年)7月2日


日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児