改正貸金業法の完全施行に関する会長声明

改正貸金業法が、本日、完全施行された。同法は生活苦・経済苦での自殺者が1日当たり21人にも及ぶ深刻な多重債務問題解決等のため、2006年12月に国会で全会一致で成立し、段階的に施行されてきた。当連合会はこれまで一貫して多重債務者の救済活動を行うとともに、長年に渡って、グレーゾーン金利の廃止等を強く求めて市民団体とともに立法活動を強力に展開してきた。完全施行によって、グレーゾーン金利の廃止を含む上限金利規制や総量規制がなされ、これによって、多重債務者を生まない社会に向け大きく踏み出すことができた。法改正および完全施行に至ったのは当連合会を含む広範な市民運動の大きな成果であり、画期的なものとして高く評価する。


しかし、課題も残っている。収入の3分の1を超えて借り入れ、総量規制の対象となる人が数百万人にも及ぶといわれる。したがって、完全施行で新規の借入が出来なくなると困惑している多重債務者を余すところなく相談窓口まで導き、債務整理及び生活再建を支援する必要がある。そのため、当連合会も含め、政府の多重債務者対策本部、地方自治体の消費生活相談、福祉、徴収等の各窓口及び被害者団体等が連携を図り、多重債務相談、生活再建支援体制を充実強化することが急務となっている。また、ヤミ金融に対しては、警察が徹底した摘発を図るとともに、銀行口座の凍結、携帯電話の利用停止及び最高裁の判決等を活かして、その利得を吐き出させる等のヤミ金融撲滅に向けた強力な活動が求められる。


多重債務問題の背景には、非正規労働者の増大によるワーキングプア、違法な派遣切りや日本の社会保障制度の脆弱さ等の貧困問題があり、市民が安心して暮らせる社会を目指して、国全体として貧困対策が求められている。


当連合会は、完全施行に合わせた全国的な相談会の実施や全国各地の弁護士会での無料相談体制の強化、地方自治体等の相談機関との連携強化、多重債務者の救済及びその生活再建やヤミ金融被害の救済等に総力を傾ける。


さらに、貧困問題は克服すべき社会問題かつ深刻な人権問題であり、当連合会は貧困問題解決を最優先の課題として全力を尽くすことをここに表明する。



2010年(平成22年)6月18日


日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児