ルワンダ国際刑事法廷の弁護士に対する逮捕を懸念し、即時の釈放を求める会長声明

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2010年5月28日、Peter Erlinder弁護士(米国)が、ルワンダの首都キガリにおいて、同国の警察によって逮捕された。この逮捕の容疑は、同国の「集団殺戮思想の処罰に関する法律」の下での集団殺害否認罪及び集団殺害矮小化罪であると伝えられている。この逮捕に対しては、すでに国際法曹団体や弁護士会が、逮捕を非難し、同弁護士の即時釈放を求める声明を発表している。

 

Erlinder弁護士は、米国のローカレッジの教授をつとめる傍ら、ルワンダ国際刑事法廷(ICTR)で活動し、ICTR独立弁護士協会の会長である。同弁護士は、ルワンダの大統領選においてPaul Kagame現大統領の対立候補である政治家(Ms. Victoire Ingabire Umuhoza)の事件を引き受けるためにキガリに滞在している際に逮捕されたと伝えられている。この政治家もまた、4月に同種の容疑で逮捕されていたという。

 

1990年に第8回国連犯罪防止刑事司法会議が採択した「法律家の役割に関する基本原則」は、「法律家は、裁判所、法廷その他の法的・行政上の機関において、書面や口頭の主張または専門的外観において善意でなされた関連する発言について、民事及び刑事上の免責を享受するものとされる」と述べて、法律家の職務を保障している。また、同基本原則は、法律家の職務行為が依頼人の思想と同一視されてはならないことや、適正な弁護活動に対して各種の制裁が加えられないように各国政府が保障すべきことを求めている。それゆえ、Erlinder弁護士に対する逮捕が、同弁護士のICTRやルワンダ国内での弁護士としての活動を理由とするものであれば、そのような逮捕は、上記の基本原則に明白に違反するのみならず、弁護士による人権擁護活動を不可能なものとするきわめて深刻な事態である。


弁護士がその職務遂行を理由に、公権力によって不利益を課されたり、あるいは何人によっても危害を加えられたりすることがあってはならないということは、法の支配を維持するための前提条件である。

 

日本弁護士連合会は、以上の理由で、ルワンダ政府当局によるErlinder弁護士に対する逮捕を深く懸念するとともに、同国政府に対する即時の釈放を求める。あわせて、米国をはじめとする関係国政府、ICTRを主催する国連が、同弁護士の釈放のための行動を取られるように求める。

 

2010年6月16日
日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児