名張毒ぶどう酒事件第7次再審請求最高裁決定についての会長声明

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最高裁判所は、2010年4月5日付けで、奥西勝氏に係る名張毒ぶどう酒事件第7次再審請求の特別抗告審につき、名古屋高等裁判所刑事第2部の下した再審開始決定取消決定を取り消し、名古屋高等裁判所に差し戻す旨の決定を下した。

 

本件は、1961年(昭和36年)3月に、三重県名張市で発生したぶどう酒に農薬が混入されて十数名が死傷した事件であり、奥西氏は一審で無罪となったものの控訴審で逆転死刑判決を受け、最高裁で死刑判決が確定していた。当連合会は、1973年(昭和48年)から人権擁護委員会において名張事件委員会を設置し、以来奥西氏の救済のため最大限の支援を行ってきた。

 

今回の最高裁決定が、名古屋高等裁判所刑事第2部決定を「科学的知見に基づく検討をしたとはいえず、その推論過程に誤りがある」として、これを取り消したことは評価できる。

 

しかし、本件の確定有罪判決には既に重大な疑いが存在することは明らかであり、既に84歳の高齢である奥西氏の再審は直ちに開始されなければならない。最高裁決定が、奥西氏の再審開始を決定せずに差し戻したことは、遺憾であると言わざるを得ない。

 

当連合会は、名古屋高等裁判所に対して、すみやかに差戻審の審理を遂げ、一日も早く再審開始を決定することを要望する。

 

また、当連合会は、今後とも奥西氏が完全無罪判決を勝ち取り死刑台から生還するときまで、あらゆる支援を惜しまないことをここに表明する。

 

2010年4月6日
日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児