中国政府の邦人に対する死刑執行及びさらなる死刑執行通告に関する日弁連コメント

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2010年4月6日
日本弁護士連合会


 

本日、中国政府は、覚せい剤を日本に密輸しようとした罪により中国で死刑が確定していた日本人男性に対し、死刑を執行した。同政府は、さらに3名の日本人死刑囚についても同様に死刑を執行することを日本政府に通告している。

 

中国政府から執行通告がなされて以降、当連合会は、日本政府に対し、国際人権(自由権)規約第6条によって日本国民に保障された生命権を保護するために、死刑を執行しないよう、中国政府に対して明確な要望をすべきことを求めてきた。しかし、日本政府は、切迫した死刑の執行に対して懸念を表明するにとどまり、死刑の執行を止められなかったことは極めて遺憾である。

 

死刑は、人の生命を不可逆的に奪う究極の刑罰であって、その過ちは回復不可能なものである。それゆえ、国際人権(自由権)規約は、死刑の廃止が望ましいことを示しつつ、たとえ死刑を存置する場合においても、死刑は最も重大な犯罪についてのみ科することができるとし(第6条2項)、さらに、国際人権(自由権)規約委員会は、薬物関連犯罪をはじめとして、人の生命の死という結果を伴わない犯罪は「最も重大な犯罪」にはあたらないとの見解を繰り返し明らかにしてきた。しかも、死刑が執行された日本人男性は、裁判においても通訳の適格性について争っていたと伝えられており、国際人権(自由権)規約第14条に規定された公正な裁判を受ける権利をも保障されていなかった疑いが極めて強い。

 

今回の死刑執行は極めて遺憾であり、当連合会は、日本政府が毅然として、中国政府に対し、残る3名の日本人男性に対する死刑執行をしないよう明確な要望をすべきことを、重ねて強く求めるものである。

 

以上