障がいのある人の権利条約の批准と国内法整備に関する会長声明

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政府は、障害のある人の権利条約(以下「権利条約」という。)の批准に対する承認を今国会中にも求める方針である。権利条約は、障がいを理由とする差別の禁止などを通じて障がいのある人に人権が等しく保障されるべきことを規定する画期的なものであり、当連合会は、その批准を強く求めるとともに、条約が規定する水準にふさわしい国内法の整備を求めるものである。

 

ところで、権利条約は、障がいのある人に対する合理的な配慮を行わないこと自体が差別にあたると明記したうえで、生活のさまざまな場面で差別を排除するための立法上の措置を行うこと、条約実施の促進、保護、監視にあたる国内モニタリング機関を設置することなどを求めているが、これらの人権保障システムは未だ日本には存在しない。

 

政府は、今般の条約批准の承認と併せて、障害者基本法の中に、合理的配慮の否定を含むいくつかの差別の定義規定を設け、障害者基本法24条に定める中央障害者施策推進協議会に国内モニタリング機関の機能を持たせる改正を行おうとしている。しかし、障害者基本法は、元来国や自治体などの施策のあり方を定めるものであって、改正によっても、障がいのある人に対して、具体的な権利を認めるものとなっていない。また、中央障害者施策推進協議会は、恒常的な組織体制を持たないばかりか、人事及び予算の面からの独立性が担保されておらず、救済の権能も有していないなど、人権救済機関としての実態を有するものとはなっていない。

 

国内法の整備がされないまま権利条約が批准されると、権利条約が求めている人権保障システムの確立が先送りされる結果だけをもたらさないかが強く懸念される。

 

当連合会は、権利条約の批准と併せて当連合会がかねて求めてきたとおり、具体的な裁判規範性を有し、行政救済の仕組みを伴う実体法体系としての差別禁止法を制定すること、国内モニタリング機関を政府から独立した内閣府の外局として設置し、救済機能を有する恒常的な組織とすることなど、障がいのある人の基本的人権を保障するシステムの基本的枠組みを構築することを強く求めるものである。

 

2009年3月13日
日本弁護士連合会
会長 宮﨑 誠


 

【参考】
→「障がいを理由とする差別を禁止する法律」日弁連法案概要の提案(2007年3月15日)