横浜事件第4次再審請求に対する横浜地裁決定についての会長談話

本日、横浜地方裁判所は、治安維持法違反に問われた小野康人氏の遺族らが申し立てた、いわゆる横浜事件第4次再審請求に対し、再審を開始する旨の決定を下した。


請求人らは、(1)泊での会合は日本共産党再建を目的とした会議ではなかったし、雑誌に掲載した細川嘉六論文は共産主義的啓蒙論文ではないからそもそも治安維持法違反に問われる事実はなかったこと、(2)小野氏や相川氏の自白は特高警察の拷問により強いられた虚偽のものであること、を理由として再審開始を求めていた。


裁判所の判断は、そのいずれをも認め、請求人らが提出した新証拠について、旧刑事訴訟法485条第6号により無罪を言い渡すべき新たに発見した明確な証拠であると判断したものである。
しかも本決定は、「有罪確定判決で認定された益田に対する拷問と同様の拷問が小野や相川を含む横浜事件の被疑者らに加えられたことが合理的に推認される」、「原確定審裁判所が小野及び相川の各供述について慎重な検討を行ったとは認められず、かえって、総じて拙速と言われてもやむを得ないようなずさんな事件処理がされたことがうかがわれるところである」と判示し、特高警察による事件のねつ造とともに、あわせて、当時の司法のあり方を厳しく批判したものであって、高く評価できる。


検察官は、本件再審開始決定に対し、即時抗告をせず、速やかに再審公判に移行すべきである。そして、再審公判では、故人が悲願として求めていた冤罪の主張について、横浜事件の真相に迫った審理が求められるというべきである。


当連合会は、これまで横浜事件の被害回復をすべきことについて意見を述べてきたが、今回の横浜事件第4次再審請求についても、裁判所において、真に無辜の救済が果たされることを期待するものである。

2008年10月31日


日本弁護士連合会
会長  宮﨑  誠