G8洞爺湖サミット終了を受けての会長声明

日本が議長国を務めた主要8ヶ国首脳会議(G8洞爺湖サミット)とこれと同時に開催された主要経済国会議では、温暖化対策に各国がどのような責任を果たすのかが重大なテーマとされた。特に、2009年末に開かれる気候変動枠組条約締約国会議(COP15)では、2013年以降の先進国の排出削減の約束と行動及び途上国の行動等についての国際枠組みを合意する予定であり、今回のサミットはその前提となる数値を掲げられるか注目されていた。
しかしながら、8日のG8サミットでは、長期目標について基準年にふれずに「2050年までに世界全体の温暖化ガス排出量を少なくとも半減するとの目標を国連気候変動枠組条約の締結国と共有することを求める」とするにとどまった。また、中期目標については、条件つきで「野心的な総量での国別目標を実施する」と述べたのみで、先進国全体の具体的削減数値を示し、先進国が率先して温暖化問題に取り組む決意を示すことはできなかった。9日の主要経済国会議において何らの中・長期の数値目標に言及できなかったのは、G8サミットで先進国全体の中期数値目標に踏み込めなかったことによるところが大きいといわざるをえない。


以上のように、今回のサミットの結果は決して評価できるものではない。とはいえ、議長国を務めたわが国が、温暖化ガスの排出量を総量として削減する責任は重大である。
当連合会は、2006年11月22日付意見書「地球温暖化防止対策の強化に向けて」を公表し、日本の中・長期目標の設定と、その目標の達成のために、総量において排出上限枠を設定して取引を認める排出量取引制度(義務参加型キャップアンドトレード型排出量取引制度)や炭素税などの経済的仕組みの早期導入を求めてきた。
しかしながら、わが国はまだ、自らの中期目標を示せておらず、実効的な経済的仕組みも存在しない。2008年6月26日に公表された経済産業省「地球温暖化対応のための経済的手法研究会中間報告(案)」に示されているエネルギーなど効率(原単位)指標を容認する取引制度は、排出削減を確実にする仕組みとはいえないし、国際的な排出量取引とのリンクも出来ないものである。
当連合会は改めて、排出総量を確実に費用対効果の高い方法で削減できる仕組みであるキャップアンドトレード型排出量取引制度の早期導入に向けて、すみやかに具体的検討を開始することを政府に求める。


2008年(平成20年)7月11日


日本弁護士連合会
会長 宮﨑 誠