国連人権理事会本会議におけるUPR審査に対する日本政府の対応についての日弁連コメント

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2008年(平成20年)6月13日
日本弁護士連合会


 

  1. 本日(ジュネーブ時間12日午後)、国連人権理事会本会議において日本政府は5月の作業部会報告書に示された各国政府からの26項目(別紙1)の勧告についての対応を明らかにした。
  2. 日本政府が、勧告受け容れを明確にした項目は、パリ原則に基づく国内人権機関の設置あるいは女性に対する差別、少数民族に属する女性に対する差別の撤廃などを含む13項目(別紙2)である。
  3. また、1項については、自由権規約第二選択議定書を除く人権条約・選択議定書の批准について検討すること、21項に言及されている入管収容所に対する国際的な査察についても検討することを約した。アイヌ民族が先住民族であることを国会と政府が確認したことも報告した。
  4. 当連合会は日本政府が26項目及び勧告の内その半数についてこれを受け容れ、その実施のためのフォロー、人権条約・議定書の批准とりわけ、第一選択議定書(個人通報制度)の批准や国内人権機関の設置などについて検討を約束したことを高く評価し、これを歓迎するものである。
    これらの点については、今後日本政府は国連人権理事会のフォローアップ手続などにしたがって対話と協力によってそれぞれの課題を着実に実現していく責任を負うこととなった。日本政府が受け入れることを表明した勧告のフォローアップ、検討を約束した勧告の今後の検討作業に当連合会も積極的な協力を惜しまない。
  5. これに対して、日本政府が受け容れあるいは検討を約束しなかった勧告は、警察における取調べをモニターする方法について検討し、代用監獄制度のもとにおける警察での長期勾留の利用について再検証することあるいは従軍慰安婦問題について国連のメカニズムの勧告に真摯に対応すること等、9項目(別紙3)の勧告である。
  6. UPR作業部会において日本に対し各国からなされた26の勧告は、当連合会が情報提供において求めた死刑の停止や代用監獄制度の廃止等の、条約機関から繰り返し勧告がなされながら未解決であった人権問題に対する日本政府の取組みを促すものであった。当連合会は、日本政府が、これら26の勧告のすべてを受け入れることを強く期待していたところであり、以上のような重要な勧告について、日本政府がこれを受け容れないとしたことは誠に遺憾であり、残念である。
  7. とりわけ、UPR作業部会において、多くの国が日本における死刑の執行の継続に対する懸念を表明し、日本政府に対し死刑の停止を勧告したことは、国際社会の共通の意思の表明と言え、当連合会のとる立場とも一致する。当連合会は、日本政府が、死刑執行停止を実現するようにという各国からの勧告に真摯に耳を傾け、死刑の執行を増加・継続させている現在の政府の政策を見直すことを期待する。
    また、代用監獄制度と取調べの監視の問題についての日本政府の回答は、国際人権保障の観点から疑問である。23日にも及ぶ長期の警察拘禁は世界に類を見ないものであり、また警察等の取調べのすべての過程を録音録画することは、いまや国際的な常識となっている。代用監獄を廃止し、すべての取調べを監視する方向に向けての制度改革を検討することは当然のことであり、これを受け容れなかった日本政府の姿勢は国際的な批判を免れないであろう。
  8. 26の勧告の中には、ただちに受け入れることが困難なものもあるであろうことは理解できる。受け入れることが困難な勧告について、その原因を探り、類似の問題を克服した他国の経験に学ぶ、国連人権高等弁務官事務所その他の機関から専門的な支援を受ける等の勧告の実現に向けた対話と協議の過程を構築していくことは、UPRを受ける全ての国々にとっての今後の課題である。
    当連合会は、改めて日本政府に対し、今回の審査において提起されたすべての人権問題について、その現状に関する情報を更に広く公開することを要請するとともに、各人権問題の解決に向けて、必要な場合には広く国民的議論を尽くし、解決に向けての具体的な一歩を踏み出すよう強く要請するものである。
    UPRは、途切れずに続く対話の過程の一部分であり、当連合会は、今回のUPRを通じての日本政府との対話を今後とも継続し、今秋にも予定されている自由権規約の第5回政府報告書審査などの機会も生かしつつ、日本における人権状況の確実な改善につなげていく所存である。

 

以上