山口組系旧五菱会ヤミ金融事件の最高裁判決に関する会長談話

本日、最高裁判所は、指定暴力団山口組系旧五菱会のヤミ金融事件で、被害者がヤミ金融に支払った金銭の全額について損害賠償請求を認め、ヤミ金融から被害者への貸付金額は損害額から控除しない、との判決を言い渡した。


すなわち、ヤミ金融の貸付金が民法708条に規定する不法原因給付に該当する以上、ヤミ金融が貸付金元本の返還を請求することはできず、損益相殺の対象にもならない、ということが最高裁によっても明らかにされた意義は大きい。


2003年に成立したヤミ金融対策法に、金利が年109.5パーセントを超える貸付契約無効の規定(現行貸金業法42条)を導入する際、当連合会は「元本の返済は不要である」ことを法律上明記するよう要請した。しかし、その旨の明記がされるに至らなかったため、これによって元本については返済義務があるとの誤解が生じることが懸念された。そこで当連合会は、同法の制定直後から、ヤミ金融による元金の不当利得返還請求に対しては不法原因給付に該当し、返還を要しない旨の解釈が正しく、警察庁その他関係行政機関に対し法律の正しい解釈に則りヤミ金融対策を一層強化することを求めた。


ところが、現場の警察官が「借りたものは返すべきだ」などと間違った対応をとるなど、その解釈の不徹底さがヤミ金融の撲滅を推し進める上で大きな障害となっていた。


本日の最高裁判決によって、ヤミ金融の「元金」はおよそ法的保護に値せず、いかなる名目であれヤミ金融が被害者に金銭の支払を要求する権利はない、ということが明らかにされた。同判決によって、ヤミ金融被害者の救済とヤミ金融の完全撲滅に向け、大きな前進があったものと評価できる。「借りた金を返せ」というヤミ金融業者の言い分は、もはや通用しない。


当連合会は、警察庁その他関係行政機関に対し、最高裁判決の趣旨に従ってヤミ金融対策を一層強化していくよう要請する。ヤミ金融の被害者には、早期に弁護士に相談をして、勇気をもってヤミ金融犯罪を告発するなどヤミ金融被害を撲滅する運動に参加していただきたい。


当連合会は、ヤミ金融に対して引き続き徹底した厳しい対応を行い、ヤミ金融の完全撲滅に向けて努力する所存である。


2008年(平成20年)6月10日


日本弁護士連合会
会長 宮﨑 誠