国連人権理事会における日本のUPR審査に関する日弁連コメント

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2008年5月9日
日本弁護士連合会


 

本日(ジュネーブ時間9日午後)、国連人権理事会の第2回普遍的定期的審査作業部会において日本の人権状況について審査が行われた。

 

国連人権理事会が発足して二年を経るがそこでの新しい重要な制度として普遍的定期的人権審査が設けられた。同制度は、昨年一応の制度設計が終わり、今年から実施が始まったばかりである。人権理事国その他の国連加盟国、国連人権高等弁務官事務所のみならずNGOおよび市民社会は、同制度のより効果的な実施をめざし手探りで模索している段階ともいえる。当連合会は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする弁護士の強制加入団体である。当連合会のこのような使命に照らして、国際人権基準を実施する重要な局面に関わる普遍的定期的審査制度の実行について、強い関心を抱いている。

 

今回、当連合会は、第2回普遍的定期的審査作業部会において、日本の人権審査が行われるにあたり、国連人権高等弁務官事務所に対しNGOとして報告書を提出し、日本の人権状況について情報提供を行った。そして結論として、(1)国連条約機関からの勧告の速やかな実施、(2)パリ原則に従った国内人権機関の設置、(3)個人通報制度を定めた人権諸条約に関する選択議定書の批准に加え、個別人権問題として、(4)代用監獄の廃止、取調べの可視化及び長期取調べの禁止、(5)死刑制度存置に伴う重大な人権侵害の除去及び死刑執行の即時停止、(6)日本社会に存在する様々な差別、特に、外国人、婚外子、女性に対する公的機関による差別の撤廃及び私人による外国人、部落民、アイヌ、婚外子、女性、障がいのある人に対する差別の撤廃に向けた取組みを求めた。また、今回の審査の直前には、ジュネーブ国連本部会議場内でNGO会議を主催し、日本の人権審査に関するNGOからの情報提供・意見表明の場を設けた。そこでは、当連合会が作成した冤罪事件のドキュメンタリーフィルムの上映を行った。参加NGOからは、当連合会の前記指摘を踏まえて、日本政府による従軍慰安婦に対する謝罪・賠償、私人による差別の規制立法の制定を強調する意見が表明され、また、マリーニョ・メネンデス拷問禁止委員会委員は代用監獄制度の速やかな廃止を重ねて求めるとの発言がなされた。

 

本日行われた作業部会における審査では、特に、死刑、代用監獄、及び、国内人権機関の設置の問題を含む全ての当連合会が指摘してきた問題が取り上げられ、各国から日本政府に対し質問や、意見が述べられた。審査の結果は、6月に行われる人権理事会において日本に対する勧告を含む結論として採択される。作業部会における審査は、政府の報告書と共に、日本に対する国連の条約機関や特別報告書からの勧告等をまとめた報告書、及び、NGOからの情報提供の要約に基づき行われたものであり、審査を通じて浮き彫りになり国際社会から懸念が表明された人権問題の解決に向けて日本政府が一歩を踏み出すことこそが普遍的定期的審査の本来の目的にかなうと考えられる。

 

当連合会は、改めて日本政府に対し、今回の審査において提起された人権問題について、その現状に関する情報を更に広く公開することを要請するとともに、各人権問題の解決に向けて、必要な場合には広く国民的議論を尽くし、解決に向けての具体的な一歩を踏み出すよう強く要請するものである。

 

以上