市民の皆様へ-裁判員制度実施を1年後に控えて(会長談話)

来年の5月にはいよいよ裁判員制度が始まります。今年の末ごろには、裁判員候補者名簿に掲載されたという通知を受け取られる方もおられます。


裁判員裁判は、様々な経験や知識を持った市民の皆様に参加していただき、無罪推定など刑事裁判の原則に忠実な、「よりよい刑事裁判」を実現するために実施されるものです。


市民の皆さんが、普段の生活を中断して刑事裁判に参加されることはご負担だと思います。しかし、日本でも戦前の一時期陪審裁判が実施されていました。現在も検察官の不起訴が相当だったかを審査する検察審査会に参加された市民の方が、素晴らしい活動をされています。裁判員裁判と同様に裁判に市民が参加する制度はほとんどすべての民主主義の国で実施されています。これらの制度に参加された方の中には、最初は戸惑いを感じながらも、終わった後は、とても有意義であった、改めて社会のことを見つめなおすようになったという感想を持たれる方も多数おられます。裁判員として参加されれば、皆様も同じ感想を抱かれるものと確信いたします。


また、市民の皆様が裁判員裁判に参加されることをきっかけとして、まだ不十分ではありますが、取調べの全過程の録画等の刑事司法全体の改善に向けた動きが急速に進みつつあります。


私達は、裁判員制度の開始に向けて様々な努力をしてきました。裁判員制度開始までの1年間、法廷で見て聞いてわかる裁判の実現、裁判員裁判を担う弁護態勢の確立を目指して、さらに努力します。


世界に誇れるような刑事裁判の実現に向けて、実施が一年後に迫ったこの時期に、私達の決意を改めて申し上げ、市民の皆様のご協力をお願いする次第です。


2008年(平成20年)4月8日


日本弁護士連合会
会長 宮﨑 誠