自民党及び公明党の提言に対する日弁連コメント

2008年3月14日
日本弁護士連合会


密室取調べの弊害は、富山氷見事件、鹿児島志布志事件等の冤罪事件を見れば明らかである。密室の取調室では、時として「厳しい追及」「粘り強い追及」などの名の下に、自白強要が繰り返され、冤罪の原因となってきた。また、取調べ状況をめぐって、公判において不毛な証拠調べや議論がなされ、裁判長期化の大きな原因となってきた。このような密室における取調べの弊害を取り除くために最も端的な方法が、取調べ全過程の録画であることは疑いの余地がない。日弁連は、繰り返し取調べの可視化(取調べ全過程の録画)実現の必要性を訴えてきたところである。


本日、自民党司法制度調査会の「新時代の捜査のあり方プロジェクトチーム」が、警察においても、取調べの録音・録画の試行を求める提言をとりまとめた(以下「自民党提言」という。)。また、公明党法務部会の「これからの捜査のあり方検討会」も同様のとりまとめを行い、さらに、今後検討すべき施策として、否認から自白への過程が明らかになるよう、録音・録画の対象を取調べの開始から終了までの全過程に拡大すること並びに裁判員裁判対象事件でない場合も検察官が少年及び知的障害者等の取調べの全過程を録音・録画することを掲げた(以下「公明党提言」という。)。


検察庁は、2006年8月に裁判員裁判対象事件において取調べの一部録音・録画の試行(以下「検察庁試行」という。)を開始したが、これは、現段階では、被疑者が自白をし、かつ取調官が自白調書を作成した後に、その自白調書の内容を確認する場面のみを録音・録画しているにすぎない。これでは被疑者が自白に至った経緯が客観的には全く明らかにされないだけでなく、調書の基となった捜査官の発問、被疑者自身のオリジナルの供述、さらには調書作成経過が全く不明なままであり、録音・録画をしていない場面での自白の強要等の問題を解決できない。少なくとも、公明党提言が今後検討すべき施策として掲げる取調べの開始から終了までの全過程の録画を速やかに実施すべきである。


全国の警察の取調室に録画機器が配置されることは、取調べ全過程の可視化の実現に向けてきわめて重要な施策であって、自民党及び公明党の提言を踏まえて、早急に実現されるべきであり、警察においては、任意捜査も含め、取調べの最初から最後まで全過程が録画されるべきである。


取調室が密室である以上、自白強要の危険性が消滅しないことは、氷見事件、志布志事件をはじめ、過去の冤罪例が端的に示している。その弊害を除去し、被疑者の供述経過を事後的に検証できるようにするためには、取調べの可視化(取調べ全過程の録画)しかない。


検察庁及び警察庁が、より積極的に、取調べの可視化(取調べ全過程の録画)を早急に実施することを求めるものである。


以上