国立ハンセン病療養所の将来構想に関する会長声明

現在、全国ハンセン病療養所入所者協議会及びらい予防法違憲国家賠償請求訴訟弁護団を中心として、国立ハンセン病療養所の将来構想に関し、療養所が地域に開かれ、広く市民が利用できる施設を併設できるようにすることなどを目的として、「ハンセン病問題基本法」を制定する取組みが行われている。


国は、絶対隔離政策を違憲と判断した熊本地裁判決を受け、2001(平成13)年12月25日、ハンセン病問題対策協議会において、「13の国立ハンセン病療養所入所者が在園を希望する場合には、その意思に反して退所、転園させることなく、終生の在園を保障するとともに、社会の中で生活するのと遜色のない水準を確保するため、入所者の生活環境及び医療の整備を行うよう最大限努める」ことを確認した。


当連合会も、2001(平成13)年6月21日、「ハンセン病患者であった人々の人権を回復するために」(勧告)において、国に対し、終生在園の保障と療養所の医療・看護体制などの整備・充実を求めるとともに、同年11月9日、ハンセン病問題についての特別決議において、療養所入所者に対する在園保障の問題等に関する元患者らの意見を尊重するよう強く要望した。さらに、当連合会は、その後の入所者の高齢化の現状を踏まえて、2005(平成17)年9月28日、入所者が安心して余生を過ごすことを可能とする、医療・看護・介護体制の充実などを求めて、国に対し、再度、「ハンセン病患者であった人々の人権を回復するために」とする勧告をしたところである。


その後も、入所者数の減少と高齢化はすすみ、2007(平成19)年5月現在、療養所の入所者数は2890名に減少し、平均年齢は78.9歳となっているところ、医療や看護の人員は削減され、療養所の医療機能の低下が指摘されている。また、療養所は、地域から隔絶された場所に設置されているものが多く、将来的には、少数の入所者のみが地域社会から孤立して生活することも懸念されている。


このような状況において、療養所での生活を希望する入所者に対し、権利としての終生在園を真に保障するとともに、社会において生活するのと遜色のない医療と生活を保障するためには、療養所の将来の在り方を見直し、多目的な施設とすることを可能にするなど、療養所を地域社会に開かれたものにしなければならない。また、ハンセン病の患者であった人々が社会に復帰することが支援され、かつ、社会内で生活することを終生にわたって援助されることも必要不可欠である。これらのことは、未だに社会に根強く残るハンセン病の患者であった人々に対する差別と偏見の除去にも資することになるものである。


当連合会は、国に対し、ハンセン病の患者であった人々の高齢化を十分に踏まえて、療養所の将来構想に関する協議会及び弁護団の要請を最大限に尊重して、ハンセン病問題の早期かつ全面的な解決を図るため、「ハンセン病問題基本法」を制定するよう強く要望するものである。また、当連合会は、今後とも一層ハンセン病であった人々の人権が確実に回復されるための取り組みが必要であり、当連合会が果たすべき役割が重大であることを銘記し、今後とも、関係機関と協同して、ハンセン病問題の全面的解決のために取り組んでいく決意である。


2008年(平成20年)1月25日


日本弁護士連合会
会長 平山 正剛