国連総会における死刑執行の停止決議に関する日弁連コメント

2007年12月19日
日本弁護士連合会


2007年12月18日(日本時間19日)、国連総会本会議において、すべての死刑存置国に対して、死刑の廃止を視野に入れた死刑執行の一時停止を求めることなどを内容とする決議が採択された。国連総会において、死刑執行停止を求める決議が採択されるのは、初めてのことである。


国連総会において市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)が採択された1966年当時、死刑を廃止していた国は26か国にすぎなかった。しかしその後、ヨーロッパを中心に死刑廃止の潮流は強まり、欧州評議会及び欧州連合の強いイニシアチブの下、ヨーロッパは事実上の死刑廃止地域となった。死刑廃止の流れはヨーロッパにとどまらず、ラテンアメリカ、更にはアフリカにも及んでおり、1989年には自由権規約第二選択議定書(死刑廃止条約)が採択された。いまや、世界で死刑を廃止した国は、事実上のものを含めて133か国と、存置国の64を大きく上回っている。今回の総会決議は、こうした死刑廃止へ向かう国際社会の潮流を反映したものにほかならない。


ただし、総会決議は、死刑存置国に対し、即時の死刑廃止を求めるのではなく、現実的な改善を求めている。すなわち、(1)死刑に直面する者に対する権利保障を規定した国際基準を尊重すること、(2)死刑の適用、及び、上記国際基準の遵守に関する情報を国連事務総長に提供すること、(3)死刑の使用を徐々に制限し、死刑の適用が可能な犯罪の数を削減すること、(4)死刑廃止を視野に入れ、死刑執行に関するモラトリアムを確立すること、である。これらの多くは、これまで国際人権(自由権)規約委員会や拷問禁止委員会によって改善を迫られてきた事項であり、我が国が早急に取り組まなければならない課題である。


当連合会は、かねて、日本の死刑制度は、我が国が批准した国際条約や確立された国際基準に違反しており、そのような状況下での死刑執行は行うべきではないとして、死刑執行の停止を求めてきた。にもかかわらず死刑の執行は繰り返され、特に近時は、高齢や心身の重大な疾患等の点において、国際基準に照らし大いに問題のある執行が繰り返されている。


日本政府は、総会決議を真摯に受け止め、速やかに死刑の執行を一時停止し、制度の見直しを行う作業に着手すべきである。


以上