東京大気汚染公害裁判の和解成立を受けての会長談話

本日、東京高等裁判所および東京地方裁判所において、東京大気汚染公害裁判の和解が成立しました。はじめに、病苦を押して長年にわたって裁判に取り組んでこられた原告の皆様をはじめ、和解成立に向けた関係者の皆様のご尽力に心から敬意を表します。


本和解では、自動車メーカー、国、首都高速道路(株)が東京都に一定額を拠出するとしたうえで、東京都が、都内全地域を対象に、年齢制限なく気管支ぜん息患者について、自己負担なしの医療費助成制度を創設するものとしています。
これは、対象疾病を気管支ぜん息に限定した点を除いて、当連合会が2006年11月22日付「自動車排ガスによる健康被害の救済に関する要請書」で要請した内容を実現するもので、高く評価できます。
東京都は、一日も早く制度実施をはかるとともに、慢性気管支炎、肺気腫をも対象疾病に加えることを求めるものです。


また、国は、本和解において、東京都の上記医療費助成制度に対して60億円を拠出することになりましたが、自動車排ガスによる深刻な健康被害の問題は、その性質上地域を越えて全国的に広がっており、国においては、全国規模で、当連合会の前記要請書に沿った障害補償費等の支給を含む抜本的な救済制度の創設を早期に実現すべきです。


さらに、本和解では、健康影響が懸念されている微小粒子状物質(PM2.5)について、環境省が環境基準の設定も視野に入れて検討するとしている点も評価します。欧米諸国の動向も踏まえて、わが国においても早期に微小粒子状物質(PM2.5)の環境基準を設定するとともに、その規制に取り組むことを求めるものです。


2007年(平成19年)8月8日


日本弁護士連合会
会長 平山 正剛