被害者の参加制度関連法案衆議院可決にあたっての会長声明

衆議院は、本日、被害者参加制度の新設を含む「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」を可決し、参議院に送付した。


当連合会は、犯罪被害者等の支援を重要であると考えるものであるが、現時点において直ちに被害者参加制度を導入することは刑事裁判の本質に照らし、将来に取り返しのつかない禍根を残すことになるとして、国会における慎重な審議を求めてきた。


5月29日に行われた衆議院法務委員会における参考人質疑では、被害者の遺族の立場にある二人の参考人が、この法案に対して賛成と反対という異なる意見を陳述し、被害者の中でもこの法案に対する評価が分かれていることが浮き彫りとなっている。また、研究者である二人の参考人も大きく異なる見解を述べている。


このように国民の中で意見が分かれているにもかかわらず、衆議院法務委員会においては、十分な審議が尽くされず、法案が採決されるに至った。


なお、与党の提案により、この法案を3年後に見直すとの見直し条項と資力の乏しい被害者参加人も弁護士の法的援助を受けられるようにするため必要な施策を講ずるよう努めるものとすることが附則に盛り込まれた。被害者に対する弁護士の法的援助は極めて重要であるが、被害者参加制度に関し、立法前にその影響を十分に検討することなく、見直し条項を入れて急いで法案を成立させようとする点は、立法の姿勢として適切なものとは言い難い。特に、これから裁判員制度を導入する時期に、それに先立って刑事裁判の基本的あり方を変更するような新たな制度を加える点には重大な問題がある。


よって、当連合会は、参議院において、この法案が刑事裁判の現場に与える影響やその問題点に関する審議が尽くされるように、一層慎重に審議されることを強く求めるものである。


2007年(平成19年)6月1日


日本弁護士連合会
会長 平山 正剛