箕面市住民基本台帳ネットワークシステムに関する会長談話

3月30日、箕面市長の委嘱を受けた「箕面市住民基本台帳ネットワークシステム検討委員」が、住基ネットでの自己情報の運用を希望しない住民について、住民票コードを削除することは、住民基本台帳法に基づく措置として必要かつ適法である旨の答申を出した。


日弁連はかねてより、住民基本台帳ネットワークシステムは、プライバシーを侵害するおそれが大きいなどとして反対を表明してきたところであるが、平成18年11月30日、大阪高等裁判所は、「住基ネット制度には個人情報保護対策の点で無視できない欠陥があるといわざるを得(ない)」などとして、「その運用に同意しない控訴人らに対して住基ネットの運用をすることは、その控訴人らの人格的自律を著しく脅かすものであり、・・・控訴人らのプライバシー権(自己情報コントロール権)を著しく侵害するものというべきである。」と結論付け、箕面市などに対し控訴人の住民票コードを削除することを命じた。


この判決を受けて箕面市長は、人権を守る立場の自治体の長として、この判決を受け入れる旨表明し、箕面市は上告しなかった。そして、控訴人の住民票コードを削除するだけでなく、住基ネットからの離脱を希望する他の住民への対応についても検討することを公表した。このような取組みは、住基ネットに対する自治体としての主体的な姿勢を示すものであって、評価されるべきである。


上記答申は、住基事務が市町村の自治事務であって、市町村長は住民票記載事項の適正管理義務を負っていること(住基法36条の2)を前提に、実効性のある個人情報保護法制が整備されているとはいえない現状において、住基ネットに参加するか、参加を拒否するかを住民の選択に委ねることは、市町村長の裁量により可能であるとしている。これは、住基法の正当な解釈というべきであって、箕面市のみならず、他の市町村でも参考にしうるものである。


日弁連は各地方公共団体に対し、あらためて住民基本台帳ネットワークに対して、住民の基本的人権を擁護する立場から、地方自治の本旨にのっとり、主体的な姿勢を貫くよう求めるものである。


2007年(平成19年)4月18日


日本弁護士連合会
会長 平山 正剛