放送法改正案に関する会長談話

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総務省は、今国会に提出を予定している放送法改正案において、関西テレビ放送の番組で架空の証言や虚偽のデータが使用された問題を受け、放送事業者に対し、虚偽の説明により事実でない事項を事実であると誤解させるような放送であって、国民経済又は国民生活に悪影響を及ぼし、又は及ぼすおそれがあるものを行ったときは、再発防止計画の提出を求め、大臣意見を付与して公表する制度を導入することを予定している。


放送が高度の公共性を有することに鑑みれば、放送事業者は、番組を制作・編集するに当たり、厳しい倫理が求められることはいうまでもない。特に国民の身体生命に重大な影響を及ぼす食品を取り扱う番組でデータ等のねつ造がなされるようなことは許し難いものであり、二度と繰り返されるようなことがあってはならない。その意味で放送各社は真摯にこの問題を受け止め、放送に対する国民の信頼を回復するよう努力すべきである。


しかし、このことを契機として報道の自由をいささかでも規制することは許されるものではない。放送による報道の自由は、現代の民主主義社会を支えるものとして、十二分に尊重されるべきものである。行政機関が、免許権限を背景として再発防止計画の提出を求めることは、その要件が必ずしも明確でないことと相まって、放送事業者に萎縮的効果をもたらすおそれが強く、国民の知る権利を損なうものとなることが懸念される。このような放送倫理上の問題は、放送事業者が自らを厳しく律することによって解決されるのが望ましい。


日本放送協会と日本民間放送連盟が設置した第三者機関である放送倫理・番組向上機構(BPO)は、今回の問題を受け、「放送倫理の確立と再発防止に関する委員会(仮称)」を設置することを発表した。新しい委員会は、虚偽の内容の放送により、視聴者に著しい誤解を与えた疑いのある番組について、放送事業者に対し、「勧告」又は「見解」を通知し、再発防止計画の提出を求め、意見を付して公表するものとされている。


当連合会は、放送事業者に対し、第三者機関の機能・権限を強化することにより、放送倫理上の問題を自主的・自律的に解決し、今回のような問題の再発を防止していくことを強く要請する。したがって、総務省は、放送法改正案における再発防止計画の提出を求める制度の導入については、放送事業者の上記新たな取組みを見守り、その自主的な再発防止制度の成果を検証したうえ、関係諸団体の意見を聴取して、慎重に検討すべきである。


よって、当連合会は、総務省に対し、同制度を放送法改正案から除外するよう求めるものである。


2007年(平成19年)3月28日


日本弁護士連合会
会長 平山 正剛