鹿児島選挙違反事件判決についての会長声明

本日、鹿児島地方裁判所は、2003(平成15)年4月に施行された鹿児島県議会議員選挙に関して公職選挙法違反で起訴されていた12名の被告人全員について無罪判決を言い渡した。


本件は、国選弁護人が接見禁止中の被告人と接見中に、被告人の娘の激励の手紙を見せて外部交通の確保を行ったことが接見等禁止決定(刑訴法81条)を潜脱するとして、不当にも国選弁護人がその職を解任され、更に捜査機関が組織的に、被疑者・被告人と弁護人との接見内容について接見直後に取調べを行い、この接見内容を供述調書化するという刑訴法39条1項の趣旨に違反する行為により、弁護人との秘密接見交通権を侵した事例である。


この事件における違法な取調べ方法は、これにとどまらず、任意での取調べ中の被疑者に、家族の名前と家族が被疑者を諭すような内容の紙を取調官が作成して、被疑者に強制的に踏ませる等、「踏み字」を強制したり、自由退去を認めず、弁護人選任権を侵害したとして、2007(平成19)年1月18日に鹿児島地裁で言い渡された国賠訴訟判決(その後確定)において「その取調べ手法が常軌を逸し、公権力を笠に着て被疑者を侮辱する」と厳しく断罪されたものである。


したがって、本日、弁護団の努力によって無罪判決が出たとはいえ、本件刑事事件の審理において、これらの違法な取調べによって得られた、被告人らの供述調書の任意性を巡る証拠調べに長期間を要したことは甚だ遺憾である。


本件のような虚偽自白の強要による冤罪や、自白調書の任意性をめぐる審理の長期化を二度と生じさせないためにも、取調べの全過程を録画・録音するという取調べの全過程可視化こそが、必要不可欠であり、それが裁判員裁判の開始時までに実現することを強く求める次第である。


2007年(平成19年)2月23日


日本弁護士連合会
会長 平山 正剛