「消費者契約法の一部を改正する法律案」に対する会長声明

政府は、2006(平成18)年3月3日、消費者団体訴訟制度の導入を内容とする「消費者契約法の一部を改正する法律案」を閣議決定し国会へ提出した。同制度の導入は、消費者被害の未然・拡大防止に資するものとして当連合会も永年にわたり提唱してきたところであり、画期的なものとして評価できるものである。


当連合会は、平成18年の通常国会において同制度の導入が実現されることを強く求めるものであるが、本年1月20日付「『消費者団体訴訟制度』に関して公表された法案骨子に対する意見書」において述べたとおり、下記の点は同制度の実効性を著しく損なうものであり、当連合会は今後の国会での審議においてその是正を強く求める。



1.他の適格消費者団体による確定判決等が存する場合、同一事件の請求は原則としてできない(12条5項2号)とし、確定判決等の及ぶ範囲は当該事件の当事者限りという民事訴訟法の基本原則を大きく修正している。しかし、この点に関しては、以下のとおり看過し得ない大きな弊害が認められ、消費者団体訴訟の実効性を後退させることになるので、確定判決等があっても、民事訴訟法の基本原則に則り、異なる適格消費者団体がその請求を提起、継続できる制度にすべきである。


(1) 「確定判決等」には裁判上の和解、請求の放棄等が含まれていることから、1つの適格消費者団体の和解、請求の放棄、上訴の断念により、訴訟継続中の他の適格消費者団体はそれ以上訴訟遂行ができなくなる。


(2) 他の適格消費者団体は、訴訟上の手続保障もないまま訴訟する権利が奪われる。


(3) 全部の適格消費者団体に判決の効力が及ぶため、ある適格消費者団体の敗訴確定後に、例えば刑事事件や内部告発で販売促進マニュアルなどが新たな証拠として判明したとしても、他の適格消費者団体は訴訟を提起できないなど不都合が大きい。


2.裁判管轄について、事業者の普通裁判籍、営業所などの所在地のほかに、不当条項を含む契約書等が使用された、あるいは不当勧誘行為がなされた行為地を管轄地に含めるべきである。


3.差止めの対象となる実体法に消費者契約法4条、8~10条のほかに、民法96条、90条、借地借家法の強行規定を含めるべきである。


4.不当条項の「推奨行為」を差止め対象とすべきである。


5.制度を実効性あらしめるために、適格消費者団体に対する財政面も含めた積極的な支援を行うべきである。


6.適格消費者団体が損害賠償を請求する制度や適格消費者団体が事業者の得た不当な利得の吐き出しを請求する制度など、適格消費者団体の損害賠償(金銭支払)請求制度を含めた5年後の見直し措置についての付則を設けるべきである。


当連合会としては、このような問題点、改善すべき点の是正を求めながら、あるべき消費者団体訴訟制度の実現のために今後も尽力していく決意を表明する。


2006年(平成18年)3月15日


日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛


(参考)→2006年1月20日「『消費者団体訴訟制度』に関して公表された法案骨子に対する意見書」