会長談話(ハンセン病補償法の一部を改正する法律の成立にあたって)

本年2月3日、いわゆるハンセン病補償法の一部を改正する法律が成立した。この法律により、日本統治下における「朝鮮」「台湾」をはじめとして、当時の日本政府が国外に設置したハンセン病療養所に入所していた人々に対し、国内の入所者と平等な補償が実現されることとなった。


この法律は、日本統治下の「朝鮮」と「台湾」のハンセン病療養所の入所者が改正前のハンセン病補償法に基づく補償金不支給決定の取消しを求めた訴訟において、昨年10月25日、東京地裁が結論として請求棄却と請求認容の異なる2つの判決を下したことを契機として、議員立法により成立するに至ったものである。


当連合会は、上記の東京地裁判決にあたっての会長談話において、これらの入所者の方々が、ハンセン病の患者であったことによる不当な差別と偏見に加え、植民地支配による被抑圧的な取扱いを受けていたことから、その救済の必要性が高いことを指摘し、速やかにすべての被害者を救済する施策を実施することを求めていた。


今回の国会の対応は、司法において解決しきれなかった重大な問題について、迅速に立法的な解決を図ったものである。当連合会は、人道的な観点からも、また、国際社会の中であるべき姿勢としても、この立法は適切なものであったと評価する。


しかし、国外のハンセン病療養所に入所していた人々はいずれも高齢となっているところ、既に多くの方が亡くなっており、上記東京地裁判決後も、救済を受けられずに亡くなった方も出ている。当連合会は、政府に対し、これらの方々に一刻も早い補償がされるよう、迅速に認定及び支給の手続を行うことを求めるものである。


2006年(平成18年)2月6日


日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛