会長声明(「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律」成立にあたって)

本日、明治41年(1908年)制定の監獄法が約100年ぶりに改正され、「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律」が成立した。


当連合会は、創立以来、監獄法の改正と代用監獄の廃止を訴え続けてきたが、今ようやくにして、監獄から名称を変更した刑事施設と受刑者の処遇が改革されることになった。切り離された未決拘禁者等の処遇と代用監獄問題に関する立法については、これから当連合会と法務省、警察庁の三者により、協議されることになる。


成立した今回の法律は、受刑者の人間性を尊重し、その改善更生及び円滑な社会復帰を促すことを求めた行刑改革会議の提言を生かし、当連合会が抜本的修正を求めた旧刑事施設法案を改めたものである。具体的には、受刑者に対する矯正処遇として、作業のほか、改善指導及び教科指導を明確に位置づけ、規律を緩和するとともに外部交通を拡大し、刑事施設視察委員会を創設するなど画期的内容を含んでいる。当連合会は、今後も、この法律の施行のための政省令等の制定等の具体化に向けてさらなる努力を続け、法改正後の運用状況にも十分注視していく所存である。


ただ、今回の改正にあたっては、作業賞与金の賃金化や医療の厚生労働省への移管などの抜本的改革はもとより、1日1時間の運動や単独室原則の法定化、不服審査のための独立機関の法制化などが見送られ、抽象的な権利制限条項や期間制限のない隔離収容と保護室収容の存在、非人間的内容の懲罰の存続、弁護士との外部交通の不徹底など、当連合会が改善を求めた諸点が残された。しかし、国会の修正により5年以内の見直し条項が盛り込まれたので、その機会にこれらの諸点の実現を目ざしていきたい。


当連合会は、引き続き未決拘禁者等の処遇の改善と代用監獄の廃止に向けて取り組んでいくものである。


2005年(平成17年)5月18日


日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛