会長声明-ハンセン病問題に関する検証会議の最終報告書を受けて-

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本年3月1日、ハンセン病問題に関する検証会議は、2年半の検討を経て、最終報告書を厚生労働大臣に提出しました。


最終報告書は、ハンセン病患者・元患者、家族の方々に対する長きにわたり深刻な人権侵害を引き起こしたことに関し、国の責任のみならず、医療界、法曹界、マスメデイアなど多方面の責任を指摘しています。当連合会は、この指摘を重大なものとして真摯に受けとめます。


私たちは、1953(昭和28)年らい予防法の制定以来、長年にわたって何ら具体的提言をすることなく放置し、1996(平成8)年1月「らい予防法制の改廃に関する会長声明」及び同年2月「同意見書」を公表するまでハンセン病元患者などの深刻な人権侵害の実態に迫ることができず、2001(平成13)年5月「らい予防法」違憲訴訟判決に対する会長声明や同年6月人権救済申立に対する勧告書及び勧告に伴う会長談話の公表にいたるまで実効的な人権救済勧告ができませんでした。それらのことが違憲のらい法制を温存させ、深刻な人権侵害が放置される一要因となったことは痛恨の極みです。


私たちは、上記会長声明等の公表後、これまで意見書公表、機関誌「自由と正義」特集、人権擁護大会特別決議、ブックレット発行、シンポジウムの開催などに取り組んできました。2003(平成15)年11月熊本県黒川温泉で元患者の宿泊拒否事件が発生し、これを契機に元患者に対する誹謗中傷が集中したときは、国に対し、会長声明をもって、十全な調査とハンセン病元患者に対する偏見・差別の除去のための施策を徹底することを求めました。


当連合会は、今後、検証会議の最終報告書が指摘した弁護士会が本来果たすべき役割を銘記し、基本的人権擁護と社会正義の実現のために全力を尽くす所存であり、ハンセン病元患者などの人権が迅速かつ確実に回復されるよう関係機関に働きかけるなど一層の取り組みを進め、検証会議の提言をうけて設置される「ロードマップ委員会」(仮称)の活動を支援し、ハンセン病問題の早期かつ全面的な解決に向けて全力を尽くす考えであることを改めて表明します。


2005年(平成17年)3月11日


日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛