会長談話-横浜事件東京高裁の再審開始決定に際して-

東京高等裁判所第3刑事部は、本日、いわゆる横浜事件の第3次再審請求事件につき、平成15年4月15日に横浜地方裁判所がした再審開始決定に対する検察官の即時抗告を棄却する旨の決定をした。


この決定は、前記の横浜地裁決定を是認するものであるが、再審開始の理由について変更したうえ棄却決定をしたものである。即ち、横浜地裁決定がポツダム宣言受諾により治安維持法が実質的に失効し刑の廃止があったものであり免訴を言い渡すべき明確な証拠を新たに発見した場合にあたるとした判断については、にわかに是認することはできないとしつつも、それにかえて、確定判決が拷問ないしその影響下になされた自白に基づくものであって、拷問を加えた警察官らに対する有罪判決等は、旧刑事訴訟法第485条第6号により無罪の判決をなすべき新たに発見した明確な証拠である旨を述べ、この点で、再審請求は理由があるものと判断した。


本決定は、原決定においては判断しなかった証拠による事実認定の判断に踏み込み、横浜事件における再審請求人らが悲願として求めていた冤罪の主張を正面から認めて再審開始を認めたものであり、画期的な判断である。


昨年、東京高裁の袴田事件決定、福岡高裁宮崎支部の大崎事件決定と、再審請求を否定する高裁決定が続いた中で、本決定は、無辜の救済という再審の理念を実現した決定として、全面的に評価することができる。そして、今後も、裁判所において、横浜事件について十分審議し、真に無辜の救済が果たされることを期待するものである。


2005年(平成17年)3月10日


日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛