「民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案」廃案に関する会長声明

「合意による弁護士報酬の敗訴者負担制度」の導入を内容とする「民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案」は、本日、廃案となった。これは、両面的敗訴者負担制度がもたらす弊害を危惧する広範な市民の運動と世論の高まりの結果であるが、同時に、この法案が重大な問題を抱えていたことを示している。


当連合会は、「弁護士報酬の敗訴者負担制度の一般的導入は、裁判を利用しやすくするという司法改革の理念に反する」と主張し、「合意による敗訴者負担制度」の法案についても、この制度の導入で私的契約上の弁護士報酬敗訴者負担条項が広がり、消費者、労働者、中小零細事業者など社会的弱者の裁判利用を萎縮させると指摘して、その弊害解消の立法上の措置を求め、それができない限り廃案とすべきであると主張し続けてきた。


そして、当連合会は、多くの市民と連携して、100万人署名、新聞意見広告、1300人パレード、パブリック・コメント募集、市民集会の実行、諸外国の敗訴者負担制度の実状を把握するための調査団の派遣など全会あげた運動に取り組んできた。


これらの当連合会の主張と諸活動が多くの国会議員と各政党に受け容れられたことが、今回の結果につながったと評価するものである。


当連合会は、敗訴者負担制度をめぐる取り組みと議論を重ねるなかで、市民に利用しやすい民事司法制度という視点からみると、わが国の諸制度には、いまだ立ち遅れている点が多々あることをあらためて痛感した。法律扶助、証拠開示、団体訴権などの抜本的拡充ないし創設を、すみやかに実現しなければならない。あわせて、社会的弱者の権利救済に資する弁護士報酬負担制度(片面的な敗訴者負担制度)の導入こそ実現されるべきである。


当連合会は、今後とも、市民の裁判を受ける権利を保障し拡充する制度改革に向けて全力を尽くす決意である。


2004年(平成16年)12月3日


日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛