消費者団体訴訟制度の次期通常国会での立法化を求める声明

消費者基本法に定められた消費者の権利を実現し、激増する消費者被害の拡大に歯止めをかけるために消費者団体訴訟制度の早急な導入が喫緊の課題となっている。このため、同制度は2005年の次期通常国会における実現をめざして検討されるべきである。


同制度の導入については、国民生活審議会消費者政策部会報告「21世紀型の消費者政策の在り方について」(2003年5月)でも、「消費者被害の発生・拡散を防止するための差止制度を早急に導入することが必要である。」とその早急な実現が求められ、現臨時国会でも自由民主党幹事長の代表質問に対して小泉総理大臣もその制度化を明言している。


本年5月から、国民生活審議会消費者政策部会のもとに消費者団体訴訟制度検討委員会が設置され、同制度の早期導入に向けた議論が精力的に行われてきた。同検討委員会の議事録では、消費者団体訴訟制度の実現に対して大きな反対もなく、制度の内容について相当な深度の議論がなされている。このまま議論を重ねていけば、次期通常国会に法案が提出され、2005年には同制度が実現するとの展望がもたれていた。


ところが、立法担当の内閣府国民生活局から、2004年11月8日に開催された国民生活審議会消費者政策部会において、「消費者団体訴訟制度の法案を2006年通常国会に提出したい」との説明があり、しかも予定されている同検討委員会の開催日程からしても、同制度の次期通常国会における立法化が断念される懸念がある。


しかしながら、2003年度に全国の消費生活センターに寄せられた消費者相談は137万件を超え、5年前の相談件数の3倍強という著しい激増傾向を示すものである。まさに緊急事態といえる今日の状況の下では消費者団体訴訟制度の実現を1年も先延ばしする理由はない。消費者団体においても次期通常国会における制度実現を前提に準備を進めており、早急に消費者団体訴訟制度は実現されるべきである。


消費者団体訴訟制度検討委員会、国民生活審議会消費者政策部会、内閣府国民生活局、政府においてはそれぞれ制度の実現を先延ばしするのではなく、次期通常国会での制度実現をめざして精力的な取り組みを行うよう強く求めるものである。


2004年(平成16年)11月9日


日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛