「犯罪被害者等基本法案」における犯罪被害者の刑事手続参加に関する会長談話

自由民主党、民主党、公明党の各党は、犯罪被害者基本法案を今国会に提出する予定であると伝えられている。


当連合会は、2003年10月17日の人権擁護大会において、「犯罪被害者の権利の確立とその総合的支援を求める決議」を採択し、犯罪被害者の支援に係る我が国の現状は国際水準と著しく乖離していることを指摘し、犯罪被害者基本法の制定、犯罪被害者に対する経済的支援制度の整備、民間支援組織の活動援助、犯罪被害者に対する弁護士支援制度の創設、捜査機関に対する教育研修の徹底等について国の施策を求めてきた。


今般自民党がまとめた「犯罪被害者等基本法案(仮称)骨子案」は、犯罪被害者の権利を保護する諸施策を具体的に記載するものである。


しかし当連合会は、自民党骨子案が「刑事に関する手続への参加の機会を拡充するための制度の整備等必要な施策を講ずる」としている点については、十分な議論を尽くし、慎重に対応することを求めるものである。


犯罪被害者の刑事手続参加については、被疑者、被告人に対して適正手続と無罪推定原則を厳格に求める近代刑事司法原則との関連、裁判員裁判における裁判員の心証形成や量刑判断への影響など、解決あるいは検討を要する重要課題が残されている。当連合会としても、先の人権大会で犯罪被害者が刑事訴訟手続に参加する諸制度の是非およびあり方につき早急に議論を深めることとされたことを受け、「犯罪被害者の刑事訴訟手続参加に関する協議会」を設置し、慎重かつ真剣に協議を重ねているところである。


犯罪被害者の刑事手続参加問題については、基本的人権を保障する刑事訴訟手続の原則を守りつつ、犯罪被害者の権利保護の具体的方策を広範な議論の中で希求するべきである。当連合会は、未だ立ち後れている犯罪被害者の権利の確立とその総合的支援を求めて全力で取り組む決意であり、この刑事手続参加問題については、さらに検討を重ね、当連合会としての見解をまとめていく所存であるが、各政党におかれても、幅広い議論の上で基本法を制定されることを求めるものである。


2004年(平成16年)10月21日


日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛