袴田巌氏の再審請求事件の高裁決定に対する談話

本日、東京高等裁判所第2刑事部は、袴田巌氏の再審請求事件について即時抗告を棄却した。


免田、財田川、松山、島田の各死刑再審無罪事件に続き、本件も再審開始へ大きく道が開かれるものと期待されていたが、本日の棄却決定は、この期待を完全に裏切るものであり、極めて遺憾である。


本件は、1966年静岡県旧清水市で発生した強盗殺人放火事件で、1980年最高裁判所で死刑判決が確定したが、犯人とされた袴田巌氏は、密室での長時間の取調べにより逮捕後20日目に自白させられたものの、第一審公判開始以来今日まで一貫して無実を叫び続けている。当連合会は、1981年再審を請求した直後より本件を支援してきたところである。


弁護団は、1994年静岡地裁の再審請求棄却決定に対する即時抗告後、5点の衣類が犯行着衣であるとの確定判決の認定に疑問を生じさせる鑑定書をはじめ、多数の新証拠を提出していた。にもかかわらず、本決定において、新証拠の明白性の要件がことごとく否定され、再審開始が認められなかったことは、不当といわざるを得ない。


袴田巌氏は、現在68歳であり、身体拘束期間はすでに38年もの長期間に及んでいるうえ、健康を害している状況にある。


当連合会は、本件に対する支援を今後一層強化し、一日も早い再審開始へ向けて各界各層のご協力をお願いするとともに、事件の真相を解明するための証拠の全面開示の実現、取調べ状況の可視化(録画・録音)、不法な取調べの温床となっている代用監獄制度の廃止など、えん罪を防止するための制度改革の実現に向けて全力を尽くす決意である。


2004年(平成16年)8月27日


日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛