核燃料サイクルコストに関する虚偽答弁、試算隠しについての会長声明

本年7月、経済産業省が、核燃料サイクルコストに関し、再処理をした場合と直接処分の場合を比較した報告書を1994年に作成していたことが、内部告発された。また、この94年報告書を討議した際の議事要旨から、試算結果を国と電力会社が一体となって隠蔽していたことが窺える。


さらに、同じコスト問題について、1994年には原子力委員会もコスト比較を非公開の分科会で行っていたこと、電気事業連合会も1996年に研究報告を行っていたこと、1998年には旧通産省の外郭団体である財団法人原子力環境整備センターでも包括的な報告書を作成していたことが、明らかになった。


旧通産省の1994年の試算によれば、バックエンド費用による電気料金の増加分は、国内再処理ケースが+1.336円/kW時に対して、直接処分ケースで+0.348円/kW時と約4倍のコスト高となっており、他の資料でも、程度の差はあれ、直接処分のほうが安いことが明確になっていた。


1993年4月六ヶ所再処理工場の建設が始まったが、国や電力会社が再処理政策の基本にかかわる「経済性」にかわる重要な情報を国民に公開することなく国策として推進してきたことは、原子力基本法の公開原則に違反し、国の重要な施策を誤らせる重大な資料隠しと非難されてもやむを得ない。


ところで、六ヶ所再処理工場ではウラン試験が開始されようとしているが、これは施設全体を放射能で汚染させることとなり、住民に放射能汚染の危険性をもたらすだけではなく、施設の閉鎖費用を著しく高騰させ、将来にわたって核燃料サイクル・原子力政策の見直し論議を封ずるような後戻りの効かない状態を作り出す。そこで、日弁連は、本年5月に、今夏にも予定されている六ヶ所再処理工場のウラン試験開始の停止を強く求める緊急提言を公表したが、今回の情報隠蔽に鑑み、再度、再処理工場の操業の中止を強く訴えるとともに、あわせて以下の通り要望する。


  1. 情報が公開されなかった経緯を明確にし、核燃料サイクル・原子力政策に関する情報公開を徹底すること。
  2. 新しい原子力開発利用長期計画の策定においては、改めてコストの比較検討を行うこと。
  3. 少なくとも新しい原子力開発利用長期計画の策定中は、六ヶ所再処理工場のウラン試験を開始しないこと。

以上、声明する。


2004年(平成16年)8月6日


日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛