会長声明(第159回国会における司法制度改革関連法成立にあたって)

本日、参議院本会議で、「判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律」と、知的財産事件の審理の充実・迅速化や知的財産高等裁判所の設置に関するいわゆる「知財二法」が可決、成立した。これにより、国民の司法参加制度を創設する「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」、被疑者国選弁護制度の創設と証拠開示制度など刑事裁判の充実・迅速化を図る「刑事訴訟法等の一部を改正する法律」、国選弁護制度・民事法律扶助事業の運営主体となる日本司法支援センターを創設する「総合法律支援法」、労働審判制度を創設する「労働審判法」、原告適格の拡大など司法による行政のチェック機能を強化する「行政事件訴訟法の一部を改正する法律」など、9法案が成立した。今国会に提出された司法制度改革関連10法案のうち、つとに問題点が指摘されてきたいわゆる「弁護士報酬の敗訴者負担法案」を除くすべての法案が成立に至ったものである。


日本弁護士連合会は、1990年定期総会において第1次司法改革宣言を行った。以来、「小さな司法から大きな司法への転換」「市民の司法の実現」をめざし、その実現のために真摯な議論と地道な活動を続けてきた。1999年、内閣に司法制度改革審議会が設置され、2001年、司法制度改革推進本部が審議会意見書具体化のための活動を開始した。これには法曹三者のみならず、ひろく市民・有識者も参加し、かつてない壮大な改革が進められてきた。すでにスタートしている法科大学院制度、裁判官制度改革、弁護士制度改革などに加え、今国会におけるこれら司法制度改革関連法案の成立は、まさにその成果である。当連合会は、制度改革の構想づくり、法案の作成、その成立に向けて尽力された多くの方々に対し、深い敬意を表する。


当連合会は、これら新しい制度が、国民に身近なものとして広く利用され、「市民の司法」が真に実現されることを願う。


残された制度設計はもとより、制度実施に向けた弁護士会内の体制の整備、国民への広報、法教育の充実、必要かつ十分な国の予算確保など、取り組むべき課題は多岐にわたる。とりわけ、日本司法支援センター設立に向けての準備活動、裁判員制度・被疑者国選弁護制度の導入や刑事訴訟手続の改正を受けての取り組みは、喫緊の課題である。当連合会は、日本司法支援センター推進本部・裁判員制度実施本部の新設など、新しい体制を整えつつある。


この改革は、司法制度の改革にとどまらず、わが国社会全体のあり方を大きく変革する歴史的大事業である。当連合会は、主体的・積極的にこの大事業を推進し、新しい社会の基盤となるこれら新制度が、定着し、充実し、発展していくために、今後も市民とともに歩み続けることをあらためて決意する。


2004年(平成16年)6月11日


日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛