政府提出の「公益通報者保護法案」の参議院での抜本修正もしくは廃案を求める会長声明

政府が提出した「公益通報者保護法案」が、本日(5月25日)衆議院において、野党の反対を押し切って可決された。


当連合会は、政府の「公益通報者保護法案要綱(案)」の段階で、(1)通報対象事実を、限定列挙された法律のうち罰則で担保された規定違反の事実に限定するのではなく、英国公益開示法にならって、人の生命・身体・財産への侵害・危険、環境破壊、公益に関わる違法行為一般、これらに関する情報隠匿行為とすべきこと、(2)通報先を、犯罪行為等の発生又はこれによる被害の拡大を防止するために必要と認められる者に限定しないこと、及び(3)外部通報の保護要件が限定的列挙に過ぎるので一般的保護要件を付加することが不可欠であることを指摘して、これらの修正がなければ現在よりも公益通報者の保護水準を切り下げ、却って公益通報を抑制するおそれがあるので、拙速に法案を提出すべきではないとの意見を述べてきたところである。


しかしながら、政府は、上記要綱案から、「犯罪事実等が生じるおそれ」を「犯罪事実等がまさに生じようとしている」と変更し、内部通報後の労務提供先の応答期間を2週間から20日間に延長し、さらに、通報者に他人の正当な利益等を尊重する努力義務を課する条項を加えた法案を今国会に提出した。これは、上記要綱案より更に公益通報を制限し、通報者を萎縮させるものである。


これまでの衆議院での審議を通して、多くの問題点が指摘され、野党各党からも修正案が提出されていたにもかかわらず、与党の多数により衆議院で採決を強行したものである。


当連合会としては、参議院で、少なくとも上記(1)ないし(3)の3点が修正されることを求めるとともに、これらの修正がなされない場合には、廃案とすべきことを求める。


2004年(平成16年)5月25日


日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛