総合法律支援法成立にあたっての会長声明

1 本日、「総合法律支援法」が参議院本会議で可決され、成立した。


同法は、国民が法による紛争解決制度をより利用しやすくすること、弁護士等のサービスをより身近に受けられるようにすることを目的とし、国などの責務を明確にしたうえで、民事法律扶助・国選弁護に関する業務・弁護士過疎地域対策及び犯罪被害者援助業務などを総合的に担う新たな組織として「日本司法支援センター」(支援センター)を設置するものである。日本弁護士連合会は、「いつでも、どこでも、だれでも良質な法的サービスを受けられる社会」の実現をめざしてこれまでも積極的に諸活動に取り組み、かねてより国の責務を指摘してきたところである。同法の成立によりこの点がようやく実現に至ったことはきわめて有意義と評価できる。


2 しかし、総合法律支援法の定める「支援センター」の業務範囲は必ずしも十分ではなく、民事法律扶助の対象事件・対象者の拡大、犯罪被害者支援など業務内容の拡充が今後の課題として残されている。また、「支援センター」が市民に必要な業務を提供するためには十分な財政措置が不可欠であり、諸外国と比して貧弱な法律扶助関連予算の大幅な引き上げが目指されるべきである。


さらに、「支援センター」の運営においては、同法で明記された弁護活動等の独立性・自主性が確保されなければならない。


3 総合法律支援制度の具体的内容の多くは今後の制度設計と運用にゆだねられており、法律支援の主な担い手である弁護士及び弁護士会が今後とも果たすべき責務は重大である。当連合会は、各弁護士会とともに「支援センター」の設立及び運営に積極的に関与し、この新しい組織が真に市民に役立つものとなるよう努力を傾注する決意である。


そして、総合法律支援法に基づく諸事業が、既に成立した法科大学院制度、裁判員制度などとあわせ、「日本国憲法がよって立つ個人の尊重と国民主権の理念に基づいた司法制度の実現」という今次司法改革の基本理念を支える柱の一つとして、豊かに発展していくことを願うものである。


2004年(平成16年)5月26日


日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛