有事法制関連7法案・3条約承認案件の採択に対する会長声明

2004年5月20日、衆議院本会議において、与党と民主党の修正合意を踏まえて、有事法制関連7法案・3条約承認案件が一部修正の上可決された。


当連合会は、これまで政府の提出した「国民保護法案」及び「米軍支援・自衛隊活動に関する法案・条約承認案件」(4法案・1条約承認案件)について、憲法に抵触する危険性があることを理由として、抜本的見直しがなされない限り、審議期間の限られた今国会において拙速に審議・採決することに強く反対してきた。


「国民保護法案」は、その立法事実や国民保護措置の実効性に疑問があるのみならず、知る権利をはじめとする基本的人権を侵害し、地方自治制度を含む我が国の民主的な統治構造を平時から大きく変容させる危険性がある。これに加え、衆議院武力攻撃事態等対処特別委員会における採決直前に、与党と民主党の修正合意に基づき、「国民保護法案」の中に「武力攻撃事態法」の「改正」条項が新設され、「武力攻撃事態法」等有事法制3法案の審議過程でも全く議論されることのなかった「緊急対処事態」を「武力攻撃事態法」に追加する重大な修正が加えられた。これは、「武力攻撃事態法」の基本的性格を変更する重大な修正である。


また、「米軍支援・自衛隊活動に関する法案・条約承認案件」も、憲法が禁止する集団的自衛権の行使や、交戦権の行使を可能とする措置を内容とし、市民の生活や権利に対する幅広い制約を及ぼす危険性を有する。そして、何より、法案は全体として曖昧な要件の下で行政権に強大な権限を付与する構造となっており、「有事事態における法による行政・自衛隊の民主的コントロール」を保障する内容にはなっていない。


これらの法案・条約承認案件の法文は膨大で、かつ、国の統治制度、市民の基本的人権に重大な影響を与える内容を有するにもかかわらず、衆議院においては、内容面・時間面ともに極めて限られた審議がなされたにすぎない。このことは、国・社会の根幹に関わる問題は徹底した国民的議論を尽くすという国民主権・民主主義の精神に著しく反するものである。


当連合会は、「国民保護法案」及び「米軍支援・自衛隊活動に関する法案・条約承認案件」について、今後の参議院において慎重かつ徹底的な審議を行い、その問題点を明らかにした上で、改めて広く国民的議論を尽くすことを強く求めるものである。


2004年(平成16年)5月21日


日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛


「米軍支援・自衛隊活動に関する法案・条約承認案件」(4法案・1条約承認案件)

「武力攻撃事態等におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律案」(「米軍支援法案」)


「自衛隊法の一部を改正する法律案」(「自衛隊法改正法案」)


「武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律案」(「特定公共施設等利用法案」)


「武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律案」(以下、「外国軍用品海上輸送規制法案」という)


「日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援,物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定」(「改定ACSA」)