普天間飛行場代替施設に関するボーリング調査の中止を求める会長声明

防衛施設庁は、米軍普天間飛行場の名護市辺野古沖への移転計画に関し、現地技術調査と称して、普天間飛行場代替施設建設予定海域において63カ所にわたるボーリング調査を実施しようとしている。


建設予定海域は、沖縄県が「自然環境の厳正な保護を図る区域」と指定している区域で、文化財保護法や鳥獣保護法等で保護され、絶滅が危惧されているジュゴンが棲息し、その採餌場所となっている藻場が存するところでもある。


上記ボーリング調査について、学者・研究者ら専門家は、同調査を行うことによって、ジュゴンの生息への重大な影響のおそれを指摘し、サンゴ礁等海域環境の保全の観点からも重大な疑念を指摘しているところである。


ところが、防衛施設庁は、上記ボーリング調査は「事前調査」であって、環境影響評価手続の対象外であると主張して、環境影響評価手続に先立ち実施をしようとしている。


当連合会は、2000(平成12)年7月14日付「ジュゴン保護に関する要望書」による普天間飛行場代替施設計画について厳正な環境影響評価手続をなすよう求めているところであるが、環境影響評価法は事業の実施に先立ち環境影響評価手続の実施を義務づけ、事前に環境への影響の程度を予測・評価して、当該事業を実施するか否かの意思決定手続に反映させようというものであるのに、上記ボーリング調査は、環境影響評価手続を実施する前に、評価の対象とすべき環境の現状を変更してしまうことになり、これから行われる環境影響評価手続について、環境への影響の程度の正確な予測・評価を不能にしてしまい、環境影響評価法の趣旨をないがしろにするものである。


同代替施設建設計画に関しては、本年4月28日に方法書が縦覧に供されて環境影響評価手続が始まったばかりであるが、当連合会は、防衛施設庁に対し、上記ボーリング調査を直ちに中止し、あらためて、ボーリング調査も本体工事の一体をなすものとして、環境影響評価法に基づく、適正な環境影響評価手続を実施することを求めるものである。


2004年(平成16年)5月14日


日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛