独占禁止法改正に関する会長声明

独占禁止法の改正作業は、経済界や自民党との調整が難航していることから、大幅に遅れている。公正取引委員会は、この4月1日、各界との意見調整を踏まえた改正法案の概要を明らかにし、最終的な調整に入った。政府は、独占禁止法改正法案を速やかに閣議決定し、通常国会に上程すべきである。


今回の改正は、昨年10月28日に公表された公正取引委員会・独占禁止法研究会の報告書、それに対するパブリックコメントを受けて、公正取引委員会がとりまとめた12月24日の「独占禁止法改正の基本的考え方」に基づいている。当連合会は、昨年11月21日、同研究会報告書のうち、措置体系の見直しに関する部分について、基本的に支持することを明確にし、早期の立法化を求める意見書をとりまとめた。


いうまでもなくカルテル・談合は、自由競争を阻害し、事業者のみならず消費者・納税者である国民に重大な被害を与えるばかりか、ひいては競争力の低下によって日本経済全体に大きな悪影響を及ぼす。今回の法改正は、このような違反行為を抑止するため、課徴金の率の引き上げ、違反行為を繰り返す事業者に対する課徴金の加算制度の導入、課徴金適用対象範囲の拡大など独占禁止法違反行為に対する制裁を強化するとともに、違反行為者であっても一定の条件を充たした場合の課徴金措置減免制度の導入、適正手続に配慮した犯則調査権限の導入により違反行為の調査、摘発を容易化し、さらに罰則規定の見直し、審判手続等の見直しなどの措置体系の見直しを行おうとするものである。わが国では、これまで違反行為が認定されて課徴金を課されながら、さらにその後も違反行為を繰り返す事業者が少なからず存在しているうえ、国際カルテルには効力を発揮し得ていないということが問題視されてきた。


現在、独占禁止法の措置体系を抜本的に見直す必要性は、極めて高い。今回検討されている法改正の概要は、公正取引委員会の当初の基本的考え方から、反対論の強い独占・寡占規制の部分は引き続き検討することとして、措置体系の見直し部分に限定したものである。この改正の方向は、すでに当連合会の上記意見書でも述べているとおり、基本的には妥当であって推進すべきものである。また、政府としても、独占禁止法改正の必要性を認め、その実現を掲げている。


したがって、当連合会は、独占禁止法改正法案を速やかに閣議決定のうえ、今国会に上程するよう、強く要請する。


2004年(平成16年)4月9日


日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛