会長談話-ヤミ金融対策法の解釈について-

先般第156回通常国会でヤミ金融対策法(貸金業規制法及び出資法改正法)が成立し、その主要部分が9月1日に施行された。このうち、貸金業規制法42条の2の「貸金業を営む者が業として行う金銭を目的とする消費貸借の契約において、年109.5%を超える割合による利息の契約をしたときは、当該消費貸借の契約は、無効とする。」との規定について、一部のマスコミが「元金については返済義務があることとされた」との内容の報道をしたり、金融庁がホームページにおいて、「当該契約は無効であり、利息については一切支払う必要がありません。」と記載したりしていることから、誤解が生じており、各地の行政機関や警察において誤った解釈に基づく対応がなされるおそれがある。弁護士会においても、法律相談やヤミ金融対策における行政・警察との連携にあたり、誤った解釈に基づく対応がなされないようにする必要がある。


貸金業規制法42条の2については、法律の文言や、立法経緯(2003年7月16日衆議院財務金融委員会における法務省民事局長の「御指摘のように、不法原因給付となる場合には、元金についても返済の必要がなくなる場合があり得るということはそのとおりでございます。」との答弁)などから、次のように解釈されるものである。


  1. 同条項は、貸金業を営む者が年109.5%を超える利息の定めをした場合には、公序良俗違反の具体的事実の主張・立証をしなくても契約全体が原始的に無効であることを法律上定めた規定である。
  2. 年109.5%以下の利息であっても貸金業を営む者が年29.2%以上の利息を定めた場合は出資法違反であり、貸金業を営む者以外の者でも年109.5%を超える利息を定めた場合は出資法違反である。このような場合を含め、高利の貸付は、公序良俗違反の具体的事実の主張・立証をすることによって、契約無効を主張することは当然に可能である。
  3. 契約全体が無効となった場合の貸主と借主の清算関係については、改正貸金業規制法が規定を設けなかったことから、従来通り不当利得の諸規定に委ねられる。そして、貸主による元金の不当利得返還請求に対して、不法原因給付に該当すると主張することは否定されていない。現在、社会問題となっているヤミ金融業者については、数多くの判例が認めるように、当然に不法原因給付として元金は返還を要しないというべきである。

我々は改正法を活用して、ヤミ金融に対して、引き続き徹底した厳しい対応を行い、ヤミ金融撲滅に向けて努力する所存である。


また、報道機関各社に対し、ヤミ金融対策法の正しい解釈を普及するよう要望するとともに、金融庁・警察庁その他関係行政機関に対し、法律の正しい解釈に則り、ヤミ金融対策を一層強化していくよう、要請する。


2003年(平成15年)9月19日


日本弁護士連合会
会長 本林 徹


  • 参考 ヤミ金融の貸付につき不法原因給付にあたるとして元金の返還を否定した判例 (PDF形式16KB)