死刑確定者の死刑執行に関する会長声明

当連合会は、死刑制度の存廃について国民的な議論が尽くされるまで死刑の執行を差し控えるよう、再三にわたって法務省に対し要請してきたが、本日、大阪拘置所で死刑確定者1名に対して死刑執行がなされた。


死刑については、死刑廃止条約が1989年12月15日の国連総会で採択されて91年に発効しているほか、国連人権委員会は1997年4月以降毎年、「死刑廃止に関する決議」を行い、その決議の中で日本などの死刑存置国に対して「死刑に直面する者に対する権利保障を遵守するとともに、死刑の完全な廃止を視野に入れ、死刑執行の停止を考慮するよう求める」旨の呼びかけをしている。


更に、国際人権(自由権)規約委員会は、1993年11月と1998年11月の二度にわたって、日本政府に対して死刑廃止へ向けての措置を取ること及び死刑確定者の処遇を改善することについて勧告を出している。


また、欧州評議会は、2001年6月26日、アメリカと日本に対して死刑執行の一時停止を行い、早急に死刑制度を廃止するように促す旨の決議を採択し、2002年5月、同評議会議員会議の法務人権委員会から議員団が来日し、同委員会とわが国の死刑廃止を推進する議員連盟との共催による「司法人権セミナー 欧州評議会オブザーバー団における司法と人権:死刑廃止」が行われ、このセミナー開催結果を受けて、2002年6月13日には、欧州議会において、日本、韓国、台湾における死刑廃止に関する決議が採択され、早急に死刑を廃止するか、もしくは死刑の執行停止を実現することが要請された。


このようななか、当連合会は、2002年11月、「死刑制度問題に関する提言」を発表し、死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くし、また死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間、死刑確定者に対する死刑の執行を停止する旨の時限立法(死刑執行停止法)の制定を提唱した。


しかるに、本日、再び死刑が執行されたことは誠に遺憾である。当連合会は、政府に対し、今後は死刑の執行を差し控えるよう、改めて強く求めるものである。


2003年(平成15年)9月12日


日本弁護士連合会
会長 本林 徹