住民基本台帳ネットワークの本格稼働の停止を求める会長声明

当連合会は、2002年10月11日に開催した第45回人権擁護大会において、個人の統一的管理システムの構築に反対し、かつ住民基本台帳ネットワークシステムの稼働を停止することを求める宣言を行った。


しかし、本日から、住民基本台帳ネットワークシステムの第2次本格稼働が開始され、全国の3200余の自治体を結ぶ巨大なネットワークが全面的に動き出すことになった。


この間に、個人情報保護法や行政機関個人情報保護法などが成立したものの、繰り返して指摘してきたように、個人情報の保護法制としてはまだまだ不十分なものである。特に住民票コードによって多くの個人情報が名寄せされる危険性がたかまり、そのチェックシステムすら欠いたままであるため、国民のプライバシーが侵害される危険性は高い。また、膨大な端末をもつ住民基本台帳の巨大なネットワークシステムのセキュリティも不十分であるとの指摘がなされているにもかかわらず、国はコンピュータの利便性と普及の必要性のみを一方的に強調するのみである。


このため、いまだに住民基本台帳ネットワークシステムに参加していない自治体もあるほか、なお不接続を検討している自治体も少なからずあると伝えられている。


憲法13条が定める個人の尊厳の確保、幸福追求権の保障のためには、デジタル化されたネットワーク社会においてこそ、自己情報コントロール権が欠かせないものであることを再確認し、個人や自治体が自主的に判断してネットワークへの不接続や一時停止、離脱などを求めることを容認すべきである。


当連合会は、あらためて住民基本台帳ネットワークシステムの稼働を停止するとともに、自己情報コントロール権を確立するよう求めるものである。


2003年(平成15年)8月25日


日本弁護士連合会
会長 本林 徹