「裁判の迅速化に関する法律」の成立にあたって(声明)

本日、参議院本会議において、裁判を2年以内のできるだけ短い期間内に終わらせることを目指す「裁判の迅速化に関する法律案」(裁判迅速化法案)が可決され、ここに裁判迅速化法が成立した。


もとより、迅速な裁判を受けるのは国民の権利である。当連合会はかねてから、充実した裁判が早期に進行するよう法改正および裁判所等との協議などを通じて努力を重ねてきた。その結果、今日では裁判は従来に比べて迅速化がすすみ、1審においては民事裁判では92.8%が、刑事裁判では99.6%が2年以内に終了している。


他方、充実した審理が裁判の生命であることは論を待たない。「拙速な審理」が国民の裁判を受ける権利を著しく損なうものであることは明らかである。


当連合会は、かかる見地から、裁判の「適正・充実」と「迅速」が同時に実現されるべきものであり、民事裁判において国民の権利・利益が充実した審理により適正・迅速に実現され、刑事裁判において被告人の権利が保障され、かつ、適正で充実した審理を通じて迅速に事案の真相が解明されることが、今日の裁判に求められる最も重要な要請であると主張してきた。その結果、この法律案が衆議院で修正され、「公正かつ適正で充実した手続の下で裁判が迅速に行われることが不可欠である」としたうえで、「裁判の迅速化は、充実した手続を実施すること並びにこれを支える制度及び体制の整備を図ることにより行われるものとする」と定められたことを重視するものである。


政府及び最高裁判所は、この法律が「訴訟手続その他の裁判所における手続の整備」や「裁判所及び検察庁の人的体制の充実」を裁判の迅速化が行われるための前提として挙げていることに鑑み、裁判の迅速化をすすめる具体的な方策としては、裁判所、検察庁の人的・物的体制の拡充と、民事裁判にあっては証拠収集方法の拡充、刑事裁判にあっては、参議院の附帯決議にあるとおり、検察官による手持ち証拠の事前開示や捜査過程の可視化などの制度改革を図るべきである。


この法律は、「裁判の迅速化に係る総合的、客観的かつ多角的な検証」が行われ、その結果が2年ごとに公表されるべきものとする。この検証を国民にとって真に実りあるものとするためには、参議院の附帯決議に示されたとおり、法曹三者の協力による裁判手続の実状を踏まえた検証手続や外部有識者の関与した検証が実施されなければならない。また、検証が裁判官に対する人事評価等、検証の目的以外に流用されてはならない。


なお、当連合会は、この法律が、裁判の迅速化が行われるための「制度及び体制の整備」のひとつとして、「国民にとって利用しやすい弁護士の体制の整備」を挙げたうえ、当連合会が「国民による弁護士の利用を容易にするための弁護士の態勢の整備その他の弁護士の体制の整備」に努める責務を負うと定めたことを真摯に受け止めるものである。


当連合会は、真に国民の期待にこたえる司法制度を実現するために、「充実した手続による迅速な裁判」を従来にも増してすすめるべく、一層力を尽くすことをここに決意するものである。


2003年(平成15年)7月9日


日本弁護士連合会
会長 本林 徹