尼崎大気汚染訴訟のあっせん合意に関する会長談話

先月26日、公害等調整委員会において、いわゆる尼崎公害裁判に関し、大阪高等裁判所で成立した訴訟上の和解にかかる、「和解条項の履行を求める」あっせん申請について、申請人らと国・阪神高速道路公団との間で合意が成立した。


今回の合意成立に向けた、同委員会の精力的かつ迅速な手続き進行、並びに当事者双方の多大な努力により、極めて早期に合意されたことに対し、当連合会としても大いに敬意を表すものである。


今回合意されたあっせん内容によれば、大型車の交通量低減のための総合的な交通量調査の追加的実施、同調査結果を踏まえた大型車を対象とする効果的な交通規制の可否についての追加的検討依頼、環境ロードプライシングの試行内容の一層の充実、「連絡会」の運営の公開などが合意されている。


これらは、従来原告患者らが求めていた和解条項の誠実な履行に関し、具体的かつ実効性を伴う内容であって、高く評価しうるものである。


尼崎と同様に、西淀川、名古屋、川崎、東京の大気汚染公害訴訟での判決及び和解後の状況も尼崎の場合と同様に、道路沿道環境が一向に改善していないところ、今回の合意が大型車の交通規制等道路沿道の環境改善に向けて大きな推進力となるものと期待する。


当連合会は、既に2000(平成12)年3月16日、「自動車公害の根絶にむけた道路政策の転換を求めて」と題する意見書を発表し、同意見書において、環境容量の観点からの自動車交通総量の抑制や、道路政策の策定における広汎な市民参加の必要性等を提言しているところである。


今回のあっせん合意は、当連合会の提言の実現が急務であることを一層明らかにしたものといえる。


よって、当連合会は、国、阪神高速道路公団をはじめとする関係諸機関があっせん内容を誠実に履行し、早期の自動車公害の根絶のため全力を尽すことを求めるものである。


2003年(平成15年)7月9日


日本弁護士連合会
会長 本林 徹