有事法制3法案の採択に対する会長声明

本日、参議院本会議において有事法制3法案が可決され、わが国は第二次世界大戦後58年を経て有事法制を有する国となった。この日は、歴史の大きな転換点として、長く記憶されるであろう。


当連合会は、与党と民主党の協議により一部修正されたものの、有事法制法案はなお、平和主義・基本的人権の尊重・国民主権主義という憲法原理に抵触するおそれが大きいとして、慎重かつ徹底的な審議をした上で今国会では採決せず、国民的議論を尽くして出し直すことを求めてきた。


毎日新聞の世論調査によると、「4割」が「有事法制の整備を評価すべきかわからない」と回答しており、有事法制法案について国民に対する説明が尽くされていないことは明らかである。


しかるに、そうした状況下で、わが国の進路を決定づける有事法制法案が可決され成立したことは、きわめて遺憾である。


当連合会は、今後とも、有事法制の有する憲法上の問題点を広く明らかにし、平和が脅かされ基本的人権が侵害されることのないよう、法制の具体化や運用にあたり、厳しくチェックしていく考えである。


また、武力攻撃事態法を実施するため今後提出が予定されている「米軍支援法制」「国民保護法制」などの個別法案について、法律家団体として平和主義・基本的人権の尊重・国民主権主義という憲法原理の立場から、検討し提言していく考えである。


憲法は、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し」(前文)、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」(12条)ことを謳っている。憲法の理念や憲法が保障する基本的人権は、私たちが何もせずに与えられ守られるものではないことを想起し、今一人一人の市民が自らの自由と権利を保持するために努力することが求められている。


当連合会も、引き続き市民とともに、最大の人権侵害である戦争に反対し、憲法で保障された自由と権利を守るために最大限の努力を継続する決意である。


2003年(平成15年)6月6日


日本弁護士連合会
会長 本林 徹