イラク問題の平和的解決を求める声明

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  1. ブッシュ・アメリカ大統領は、2003年1月28日の一般教書演説において、イラクが国連安全保障理事会決議687号(1991年)等に違反して大量破壊兵器を研究・開発・保有し、中東支配の野望を再び抱き、同地域を大混乱に陥れる可能性があり、また、テロリストを援助し保護していることにより、大規模なテロの危険も想定されるとし、自国の安全に対する脅威を除去するために、イラクに対して武力攻撃を行うと公言した。現にアメリカは、空母数隻を含む15万人規模の軍隊を湾岸地域に集結中であり、いつでもイラクに対する武力攻撃を実行できる態勢を整えつつある。また、イギリスもアメリカと同一歩調をとることを表明し、イギリス軍を同地域に派遣中である。
    今、世界は差し迫った大規模な戦争の危機に直面している。戦争により多くの市民の生命が奪われ、最大の人権侵害が引き起こされることは明らかである。
  2. わが国は、戦争の惨禍を決して繰り返さないとの固い決意に基づき、「恒久の平和を念願し」、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認」し、「国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓」った(憲法前文)。
    日本政府は、憲法の平和主義および国際協調主義の理念に基づき、また唯一の被爆国として大量破壊兵器の廃絶を推進する立場から、戦争を回避するために全力を尽くすべきである。
  3. 当連合会は、創立以来半世紀余りにわたり、憲法と弁護士法に基づき平和と基本的人権の擁護および社会正義の実現を使命とし、核実験に反対し核兵器の廃絶を求めるなど、平和のうちに安全に生きる権利の実現を訴えてきた。


当連合会は、そうした立場から日本政府に対し、


  1. 国連、アメリカ、イギリス、イラクに対して、あくまでも非軍事的措置により事態を解決することを主張し、働きかけること
  2. アメリカ等が、軍事力を行使しようとするときには、支持および支援をせず、これに反対すること


を強く求める。


当連合会は、平和を希求する世界のすべての人々が協力して、現在生じている平和と安全に対する危機を非軍事的措置により解決することを、広く世界に訴えるものである。


2003年(平成15年)2月5日


日本弁護士連合会
会長 本林 徹