選択的夫婦別姓制度を導入する民法改正案の今国会上程を求める会長声明

  1. 法制審議会は、1996年2月、選択的夫婦別姓制度導入等を内容とする民法の一部を改正する法律案要綱を答申したが、6年以上経過した今も、この答申に基づく民法改正案は国会に上程されていない。
    内閣府は、昨年8月4日、「家族法に関する世論調査」の結果を発表した。この調査結果によれば、選択的夫婦別姓制度について、改正に賛成が42.1%、反対29.9%、「通称使用を認める」が23%であった。特に20代、30代では、制度導入賛成と通称使用容認を合わせると82%以上になる。
  2. 当連合会は従来、選択的夫婦別姓制度の導入について、速やかに民法改正案を国会に上程し、広く国民の間の議論とすべきことを訴えてきたが、上記世論調査の結果からは、既に世論も民法の改正を指向していることが明らかである。
    現行民法は、結婚にあたり夫婦同姓を強制して、どちらかが結婚前の姓を改めなければならない。その結果、夫の姓を称する夫婦が圧倒的に多く、妻の姓は夫の姓と平等に尊重されているとはいえない。
    日本国憲法は、個人の尊厳と両性の本質的平等を基本とし、1985年に日本が批准した女性差別撤廃条約は、姓(氏)及び職業選択を含めて、夫及び妻に同一の個人的権利を保障することを締約国に求めている。諸外国をみても、夫婦別姓を選択できる国が大多数であり、夫婦同姓を強制している国は、先進国の中では日本だけである。
    選択的夫婦別姓制度は、夫婦が望む場合は別姓も認めようという選択の制度に過ぎず、21世紀の男女共同参画社会の実現を担う若い世代の中では選択的夫婦別姓制度の導入を待ち望んでいる人々が数多くいる。価値観・生き方の多様化している現在、別姓を望む夫婦にまで同姓を強制する理由はない。別姓も選択できる制度を導入して、個人の尊厳と平等を保障するべきである。
    ところで、政府与党内に、女性の職業上の不利益回避のためなら戸籍法を改正して旧姓を通称として認めればよいとする案もあるようである。しかし、このような案では、個人が2つの姓を持つこととなり、社会的・経済的に混乱が予想される。また、混乱を防ぐために旧姓しか使用できないとするのであれば、社会的には選択的夫婦別姓制度と変わらず、なぜ戸籍上の同姓強制に固執するのか疑問である。
  3. 我が国も、夫婦別姓の選択を可能とすることにより、多様な生き方を認める成熟した社会をめざす必要がある。
  4. よって、当連合会は、政府与党に対し、今国会において、速やかに上記民法改正案を上程し、選択的夫婦別姓制度の導入を実現することを強く求める。

2002年(平成14年)4月20日


日本弁護士連合会
会長 本林 徹