在日コリアンの子どもたちに対する嫌がらせ等に関する会長声明・緊急アピール

在日コリアンの子どもたちに対する嫌がらせ等に関する会長声明

1.朝鮮民主主義人民共和国(以下「北朝鮮」という)は,2002年(平成14年)9月17日の日朝首脳会談で日本人拉致事件を公式に認めるに至ったが,同日以降日本各地で,朝鮮学校に通う子どもたち多数と朝鮮学校が心ない人たちによる嫌がらせや脅迫的言動に遭っている。


例えば,朝鮮学校に通う子どもが,登下校中,駅のホームや電車の中で腕を捕まれる,民族衣装のチョゴリを引っ張られる,「植民地時代に朝鮮人を全員殺しておけばこんなことにはならなかった」・「朝鮮に帰れ」などと言われる,すれ違いざまに「拉致」と言われるなどの被害を受けている。


朝鮮学校は,学校のホームページの掲示板への書き込み・手紙・電話などにより,朝鮮学校の子どもに対する危害の予告が行われ,そのために一時的に休校せざるを得なかった例もある。


これらの嫌がらせや脅迫的言動は,在日コリアン(在日韓国人・朝鮮人)の子どもたちの生命・身体の安全と自由を脅かし,教育を受ける権利を侵害している。 同時にこれらの行為は,憲法第13条及び世界人権宣言第1条・第2条・第3条をはじめ,国際人権規約,人種差別撤廃条約,子ども権利条約などにおける人の尊厳の保障及び人種差別禁止の理念及び規定に反する。


2.北朝鮮による拉致行為は,拉致被害者に対する重大な人権侵害行為であると同時に,逮捕・監禁罪及び国外移送目的略取罪に該当する刑法上の犯罪行為であって,許されるものではない。当連合会は2002年9月19日,日本政府に対し,刑法上の犯罪として徹底的に捜査し,北朝鮮による拉致行為及び被害実態の真相の究明,生存者の家族との面会等の実現,被害に対する補償の実現を強く要請した(同日付会長声明)。


しかし,在日コリアンの子どもたちは,北朝鮮による拉致行為に対して何らの責任がないことは明らかである。現在行われている嫌がらせや脅迫的言動はいかなる理由であっても決して許されない。


3.これらの嫌がらせや脅迫的言動は,朝鮮学校に通う子どもを含む在日コリアンに不安と恐怖を生み出しており,早急な対策を講じることが必要である。


当連合会は,前記憲法及び国際人権法に基づく政府の責務として,日本政府に対して,在日コリアンの子どもたちへの嫌がらせや脅迫的言動を防止するための対策を直ちに講じるとともに,国籍や民族が異なっても,何人も安全・平穏に生きる権利を保障し,そのための方策を講じ,実現することを要請する。


当連合会は,今後,国籍や民族の異なる人々が共生する社会の実現に向けて,いっそう積極的に取り組む決意である。


2002年(平成14年)12月19日


日本弁護士連合会
会長 本林 徹


緊急アピール

北朝鮮が日本人拉致を認めて以来、朝鮮学校に通う子ども達に対する嫌がらせが続発しています。


しかし、在日コリアンの子ども達には、拉致について何の責任もないことは明らかです。


憲法と国際人権法は、人間の尊厳を保障し、人種差別を禁止しています。


在日コリアンの子ども達には、差別を受けることなく安心して生活し通学して勉強する権利があります。嫌がらせはそうした権利を侵害するものであり、決して許されません。


日本弁護士連合会は、人権の擁護を使命とする法律家の団体として、わが国の全ての人々に対し、


  1. 在日コリアンの子ども達に対する嫌がらせや脅迫的言動を決して行わないよう、
  2. 国籍や民族が異なっても、一人ひとりがお互いの人権を尊重し共生できる社会をつくるよう、

強く訴えます。


2002年(平成14年)12月19日


日本弁護士連合会
会長 本林 徹