「らい予防法」違憲訴訟の判決に対する会長声明

本日、熊本地方裁判所において元ハンセン病患者ら127名が国を被告として提起していた「らい予防法」違憲国家賠償請求訴訟の判決が下された。


同判決は、「遅くとも昭和35年には、その(らい予防法の「隔離規定」)合理性を支える根拠を全く欠く状況に至っており、その違憲性が明白となっていた」とし、「遅くとも昭和40年以降に新法の隔離規定を改廃しなかった国会議員の立法上の不作為につき、国家賠償法上の違法性及び過失を認めるのが相当である」と認定し、国のハンセン病患者に対する政策の誤りを認め、国に対して損害賠償を命じるものであり、高く評価されるべきである。


日弁連がかねて調査した結果においても、国がハンセン病患者、元患者らに対し長年にわたって終生隔離政策をとり続け、人間存在の尊厳自体を傷つけるような著しい人権侵害行為を継続して行い、国民に対し誤った情報を流布してきた事実が明らかになっている。


そのため社会においてハンセン病患者らに対する偏見が強固に植え付けられ、社会全体が「ハンセン病患者・元患者は社会で他の人間と共生することは許されない」という誤った規範に縛られているのである。


今なお患者らの人間としての尊厳は奪われたままであり、全国13の国立療養所において4400名もの元患者が故郷へ帰ることも出来ず、頼るべき家族もなく孤独な状況におかれている。また、退所している少数の元患者は、医療や生活の保障もなく差別偏見に恐れながらの厳しい生活を余儀なくされている。


今回の判決は、国が長きにわたり行ってきた深刻な人権侵害の責任を改めて明らかにしたものである。当連合会は国がこの判決を厳しく受け止め、控訴を断念し、患者らに対し謝罪するだけでなく、ひとびとの尊厳の回復と社会における生活を営むために次のような対策を速やかに講じるよう強く要望するものである。


  1. 患者・元患者に対する差別と偏見の除去
  2. 名誉回復措置及び社会復帰と生活の保障
  3. 患者らに対する医療の保障
  4. 国民に対する、ハンセン病に関する正しい知識の周知徹底

人権擁護ならびに社会正義の実現をその使命とする当連合会も、患者らの深刻な被害を見過ごしてきた責任を改めて自覚しつつ、ハンセン病問題の全面解決に向けて今後も努力していくことを改めて決意し、表明するものである。


2001年(平成13年)5月11日


日本弁護士連合会
会長 久保井 一匡