学校教育法「改正」法案に関する会長声明

政府は、3月13日、通常国会に学校教育法の「改正」法案を提出し、1.子どもの奉仕体験活動を促進するために、学校教育法18条の2を新設し、2.問題を起こす子どもへの適切な対応を図るとして、出席停止に関する同法26条を改正しようとしている。


これは、首相の私的諮問機関である「教育改革国民会議」の最終報告が、「奉仕活動を全員が行うようにする」、「問題を起こす子どもへの教育をあいまいにしない」との提言を行なったことを受けたものである。


しかし、「教育改革国民会議」の最終報告はもとより、その審議過程においても、子どもの権利条約や憲法・教育基本法などが保障している「子どもの権利」の視点や、それに対する「国家や大人の責務」という視点が欠落している。


文部科学省が本年1月25日に発表した「21世紀教育新生プラン」によれば、今回の法案が18条の2として新設した「社会奉仕体験活動」は、「奉仕活動」を義務づけようとしている教育改革国民会議の最終報告を法制化したものである。「奉仕活動」の強制は、任意参加を前提とするボランティア活動とは異質なものであって、子どもの人権の視点に鑑みても様々な問題があり、その法制化を拙速に進めるべきではない。


また、「出席停止」措置は、他の子どもの教育を受ける権利を保障するための最後の手段として教育委員会に認められているものであるが、子どもの学校教育への権利を制限する重大な措置であることを十分に配慮しなければならない。


今回の法案では、1983年に文部省初等中等局長通知が示した出席停止の要件をかえって拡張するものであるし、停止期間のしぼりに関する定めがなく、措置の前提である子どもに対する告知と聴聞の機会を保障する適正手続規定を欠き、措置に対する不服申立制度も定められていない。前記の「問題を起こす子どもへの教育をあいまいにしない」といった視点もあいまって行き過ぎた運用がなされる危惧を払拭することはできない。


今般の学校教育法「改正」法案については、国民各層の議論を深め、十分に慎重な検討を尽くすべきである。


2001年(平成13年)3月16日


日本弁護士連合会
会長 久保井 一匡